2005年の回顧と2006年の展望










 

各 位



 2005年も大変,慌しい年になりました。当シンクタンク、そして、世界遺産総合研究所にとって,この一年の活動を回顧してみると,大変,意義深い年であったように思います。

 一つは,2003年のユネスコ本部(パリ)での第27回世界遺産委員会、2004年の中国の蘇州市で開催された第28回世界遺産委員会に続いて、南アフリカのダーバン市で開催された第29回世界遺産委員会にオブザーバーとして出席できたことです。これまで,議事録等の記録で,会議の様子を知るしか方法がありませんでしたが,世界遺産の登録がどのように議論され決まるのか,その様子を実際,自分の目で見,耳で聴くことを通じて,世界遺産条約の意義を改めて認識することができました。

 また,レセプションや会議の合間に各国の関係者と知り合いになれたのも大きな収穫でした。一昨年、そして、昨年の世界遺産委員会で会った人、それに、他の国際会議で会った人、ユネスコ本部、IUCN、ICOMOSを訪問した時に会った人、メールでコミュニケーションのあった人、マスコミ関係の人など多様です。

 二つは、新聞社、テレビ局、ラジオ局などマスコミ関係からの取材が大変多くなったことです。これまでは、電話やメールによる取材がほとんどでしたが、北海道新聞、静岡第一テレビ、静岡新聞などの記者がわざわざ広島に取材に来てくれました。フォーカル・ポイント、或は、リソース・パースンとして、今後も正確な情報把握に努めていかなければならないと考えています。

<新聞関係>
●北海道新聞「世界遺産登録へ 審判待つ大地・知床半島」(2005年1月1日)
●北海道新聞「海域保護 国際的流れ 調和型漁業に認証制度も 知床」(2005年3月3日)
●毎日新聞「難問山積の知床」(2005年3月21日)
●北海道新聞「知床 世界遺産への道」(2005年5月7日)
●北海道新聞「知床から 世界遺産への道 恋するスケソウ(6)」(2005年5月21日)
●北海道新聞(2005年5月28日)
●北海道新聞(2005年6月1日)
●毎日新聞夕刊「特集WORLD 授業時間・世界遺産」(2005年6月20日)
●中日新聞「核心 世界遺産、1年目の苦行 熊野古道消えぬ落書き」(2005年6月26日)
●北海道新聞「知床の世界遺産審査 危機遺産に時間費やす 慎重な議事も理由」
(2005年7月14日)
●日本経済新聞「世界遺産「知床に続け」登録運動で街づくり」(2005年7月18日)
●山陰中央新報「石見銀山憲章設け保護基金を 登録後の対策提案」(2005年7月27日)
●北海道新聞「知床世界遺産 管理で行政一元化を」(2005年8月9日)
●北海道新聞「知床世界遺産 世界遺産が地域を拓く(上)」(北見版 2005年8月12日)
●北海道新聞「知床世界遺産 世界遺産が地域を拓く(下)」(北見版 2005年8月13日)
●共同通信社京都支局「二条城の損傷「放置」指導受けても計画作らず 
 京都市、財政難理由に」(2005年8月23日)
●中国新聞「ニートと呼ばれる若者について考えるパネルディスカッション 呉三津田高校」
(呉・東広島版 2005年10月8日)
●読売新聞「白川郷・五箇山世界遺産十周年 世界遺産の里から−次代への課題−」
(北陸支社富山版 2005年12月6日)

<テレビ関係>
●フジテレビ「めざましテレビ 世界無形文化遺産」 (2005年11月28日放送)
●静岡第一テレビ「ドキュメント静岡 富士山の光と影」 (2005年11月19日放送)
●エイジング・ジャパン「わが町の世界遺産」 (アットエム)(2005年9月放送)
●わたらせテレビ (足利ケーブルテレビ)(2005年2月放送)
●エイジング・ジャパン「わが町の世界遺産」 (アットエム)(2005年2月放送)

<ラジオ関係>
●富士コミュニティエフエム放送「プロジェクト・チーム富士山」(2005年11月11日放送)
●TokyoFM「6sense Direct Hit」(2005年7月27日放送)
●ニッポン放送「森永卓郎、朝はニッポン一番乗り」(2005年7月12日放送)
●NHKラジオ第1  あさいちばん ニュースアップ(2005年6月14日放送)
●J-WAVE「ASIENCE SPIRIT OF ASIA  アジアが誇る世界遺産 ASIAN ENERGY」
(2005年6月5日放送)

 三つは,全国で活発化している「世界遺産登録運動」の勉強会や研究会への出講です。萌芽段階のもの、暫定リスト入りをめざし具体化しつつあるものなど、熱意、熟度、合意の度合いはまちまちです。なかでも印象的だったのは、2005年7月の(社)「島根大田青年会議所主催の「世界遺産と夢のある地域づくり」という演題での講演でした。世界遺産登録をめざし地域のソフト面、或はハード面の環境整備を行っていくこと、このことは、すなわち、真の地域づくり、まちづくりに通じるものであることを自ら再認識した次第です。まさに、「世界遺産が地域を拓く」なのです。また、「日本の世界遺産登録運動」は、海外からも注目を集めつつあります。

 四つは,国際交流団体主催行事への招聘、講演です。2005年1月26日のオーストラリア・ディの日に関西日豪協会からの招聘により、「オーストラリアの世界遺産と関西との交流」をテーマに講演を行いました。2006年は、日豪両国間の友好協力基本条約が締結されてから30周年となる「2006日豪交流年」です。2006年は、この際に作成した講演内容のプログラムを更にバージョン・アップし、日豪両国間における世界遺産を通じた国際交流、国際協力を地道に展開していきたいと考えています。2003年5月に出版しました「オセアニア編」も活用したいと考えています。
 また、未踏のアルゼンチン、チリ、ペルー、ブラジルなど南米にも行く機会を模索してみたいと思います。

 五つは,生涯学習センター、公民館など公共施設、新聞社系の文化センターや懇話会等への出講です。北海道の北見市、栃木県の足利市、東京都の調布市、神奈川県の横須賀市、兵庫県の三田市と伊丹市、岡山県の倉敷市と慌しい一年でした。2005年は、「日本の世界遺産」に力点を置き、5回シリーズ、8回シリーズとプログラムの内容を構成しました。2006年は、少し学術的になりますが、大学でも通用する14回シリーズ、28回シリーズと更に内容を深化させてまいります。

 六つは,公共施設行事への協力です。2005年9月〜10月に開催された大阪府立大型児童館ビッグバン主催の「日本と海外の世界遺産」展は、大変良い経験になりました。これは、「データ・ブック」、「マップス」、「事典」が威力を発揮しました。

 七つは,JTB{東京)、日本旅行(大阪)、日通旅行(大阪)など旅行会社とのコラボレーションです。2005年は、「海外の世界遺産」に力点を置き、文化の多様性とテーマ性を重視しました。日程の都合等で、全てに同行することは出来ませんが、それが何故に世界遺産として登録されたのか、その物件固有の顕著な普遍的価値、歴史的・文化的な価値、また、その物件が抱える問題点や課題、脅威や危険などを明確にし、理解を深めてもらうことが私どもの役割だと考えています。2006年は、更に、イタリア、スペイン、中国ドイツ、フランス、イギリス、オーストラリア韓国等と「海外の世界遺産」の裾野を広げてまいります。

 八つは、2005年11月25日のユネスコの第3回目の「人類の口承及び無形遺産の傑作宣言」で、64の候補作の中から日本の「歌舞伎」など43件が選定され、いわゆる「世界無形文化遺産」は、通算で、90件 (69の国と地域 1つはパレスチナ)になりました。2006年には、「無形文化遺産保護条約」も発効の見通しで、「人類の口承及び無形遺産の傑作」等の改訂作業で忙しくしています。国や地域の文化を考える時、有形文化財と無形文化財は、文化の両輪であり統合的なアプローチは国や地域の文化の理解を深めます。世界遺産の映像を制作、或は、見る時も、その背景音楽は、普遍的な交響曲よりも、その地の民族音楽や民謡の方がピッタリする様に思います。

 九つは、「富士山」の世界遺産登録、仕切り直しの動きです。「富士山と周辺の文化的景観をユネスコ世界遺産に!」の論稿を読まれてか、地元の新聞社、テレビ局、ラジオ局をはじめとするマスコミからの取材が増えています。富士山を取り巻く景観を近景、中景、遠景と分けた場合、私の場合は、遠景の視点です。飛行機から、新幹線から、或は、東京のオフィス街からの景観です。2006年は、富士山の周辺部をくまなく、車でまわってみたいというのが希望ですが、果たしてどの様になるでしょうか。

 十は、全国各地で流行っている「もの知り検定」の流れでしょうか。「世界遺産」に関する検定を実施して欲しい旨のお便りをしばしば頂きます。どの程度の知識を持っている人達なのかを知る為に、「世界遺産講座」などで、世界遺産クイズ的な試み、或は、講座の最終回に習熟度を確認する為に小試験をすることはありますが、何の為に実施するのか明確なコンセプトを固めつつあるところです。本格実施までに、実験的な試行をしてまいります。



 以上が当シンクタンク、そして、世界遺産総合研究所の国際的な関わりが進展していくなかでの2005年の主なトピックスです。

 私たちの仕事は,グローバルな視点に立っての地味で地道な努力と長い時間を要するものです。しかしながら,「継続は力」で,社会の為に役立つことも多くなってきました。

 2005年も,小出版ですが,下記の「世界遺産シリーズ」が11タイトル,「ふるさとシリーズ」が2タイトルの合計13タイトルの出版物を発行することが出来ました。長年の目標でありました通算100タイトルもなんとかクリアできました。これまでに、ご協力頂きました関係各位、全国の読者の皆様に感謝の意を表したいと思います。


●世界遺産ガイド−中国編− ISBN4-916208-98-6 (2005年1月)

●誇れる郷土ガイド−日本の伝統的建造物群保存地区編−ISBN4-916208-99-4(2005年1月) 

●世界遺産事典−788全物件プロフィール 2005改訂版− ISBN4-916208-96-X(2005年2月)

●誇れる郷土ガイド−日本の国立公園編− ISBN4-916208-94-3 (2005年3月)

世界遺産ガイド−産業遺産編 保存と活用− ISBN4-86200-103-3 (2005年4月)

●世界遺産学のすすめ−世界遺産が地域を拓く− ISBN4-86200-100-9 (2005年4月)

●世界遺産ガイド−ドイツ編− ISBN4-86200-101-7 (2005年6月)

●世界遺産ガイド−朝鮮半島にある世界遺産− ISBN4-86200-102-5 (2005年7月)

●世界遺産データ・ブック−2006年版− ISBN4-86200-104-1 (2005年8月)

●世界遺産ガイド−特集第29回世界遺産委員会ダーバン会議−ISBN4-86200-105-X(2005年9月)

●世界遺産ガイド−日本編2006改訂版− ISBN4-86200-107-6 (2005年10月)

●世界遺産マップス−地図で見るユネスコの世界遺産−2006改訂版ISBN4-86200-106-8
(2005年11月)

●世界遺産ガイド−日本の世界遺産登録運動− ISBN4-86200-108-4 (2005年12月)


 2006年は,果たしてどんな年になるのでしょうか。戦争のない平和な地球社会にしていかなければなりません。2006年も出来うる限り,時流にそったテーマを選択し,世の中に役立ち信頼される、名実あるシンクタンクの舵取りを世界遺産総合研究所を主力に展開していきたいと思います。長期的には30年,中期的には10年を視野におき,これまでに蓄積してきた知識と経験の集大成と活用、応用発展と後継者の育成も大きな課題です。引き続きご支援をお願い致します。



古田 陽久



 



















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