2005年3月31日
世界遺産総合研究所 所長 古田陽久
山形県が実施している「近未来やまがた・世界遺産育成プロジェクト事業」で、将来、世界遺産への登録を目指す育成候補地を「民間の山岳信仰文化が育んだ出羽三山等の文化財と風土」とすることが決まったようだ。
山形県の世界遺産育成プロジェクト推進委員会は、これまで、山形県内各地の文化財や自然を視察するなどして、世界遺産としてふさわしい地域遺産を検討。松尾芭蕉ゆかりの「山寺」(立石寺)や宮城県にもまたがる「蔵王の樹氷」などの名前も上がったが、最終的には、山岳信仰・修験霊場として1400年以上の歴史を有する「出羽三山」(月山・湯殿山・羽黒山の3つの山の総称)、それに、国の重要文化財にも指定されている元木や八幡神社など、村山地方を中心とする国内最古級の「石鳥居」を選定した。
山形県は、2005年度に、将来、世界遺産への登録を目指す育成候補地内の資産を検証、登録予定範囲の特定など、世界遺産登録に向けての具体的な「推進プラン」を策定する予定で、10年後の、ユネスコの「世界遺産リスト」への登録を目指している。
出羽三山については、2004年の5月の「庄内地方町村長・議会議長合同懇談会」、9月の「羽黒町」での講演と勉強会などで関わりをもってきただけに、大変、嬉しいニュースである。
今後は、地元の総意をたばね、当面は、暫定リスト入りをめざしたシナリオ、史跡や重要文化的景観の指定など登録要件の整備が求められる。また、顕著な普遍的価値の証明、それに、「紀伊山地の霊場と参詣道」などとの違いを明らかにしていかなければならないだろう。
育成候補地は、東北の厳しい気象条件のなか、荘厳な自然環境が育んだ山岳信仰・修験霊場など人間の修行などの営みや生活上の創意工夫、木や石のユニークな文化財、それらが、日本の原風景ともいえる山岳、森林、田園、海浜の景観など独自の地域風土を醸成している。
東北地方では、「平泉の文化遺産」(岩手県)が既に暫定リスト入りし、2008年の世界遺産登録を目標に、現在、準備が着々と進められている。世界遺産化には、地道な努力と長い時間を要する。しかしながら、10年後といわず、世界遺産登録に向けてもっとスピード・アップを図って欲しいと思う。
(古田陽久)
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