各 位
2012年は、当シンクタンク、そして世界遺産総合研究所にとって、ユネスコの世界遺産条約採択40周年、日本の世界遺産条約締約20周年を迎えた記念の年であり、将来的な方向性について道筋をつけなければならない節目の年になりました。
一つは、出版活動です。紙媒体での出版は、企画、取材、編集、整理、組版、印刷、製本、流通、販売と読者に届くまでに、多くの手間と多くの方々のご協力がなければ成り立ちません。デジタル化の進行で、出版流通にも大きな変化が起こりつつあります。本が売れない時代になりました。パソコン、インターネット、携帯電話などの普及で、ニュースなど様々な情報を新聞や書籍を読まなくても調べることが出来る様になったからです。
二つは、これまでに撮りだめてきた世界遺産の写真を一般の方々に公開する「世界遺産写真展」です。第一回目は、2010年に岩手県の一戸町で開催、第2回目は、2011年4月から6月に大阪府堺市の大阪府立大型児童館ビッグバンで、第3回目は、2011年11月3日(文化の日)に、社団法人射水青年会議所の主催で、富山県の射水市高周波文化ホール(旧新湊中央文化ホール)で、第4回目は、2011年11月に「宗像・沖ノ島と関連遺産群」世界遺産推進会議(福岡県・宗像市・福津市)の主催で、アクロス福岡2階の交流ギャラリーで、第5回目は、2012年4月に、私の母校である「呉市立両城小学校」(呉市)で開催することができました。これらは、行政、企業、学校との協働活動の成果で、ニーズがあれば、今後も継続したいと考えています。
三つは、1997年5月15日に開設した私共のホームページ。国内外からのアクセス数は、通算1,169,000。今後もコンテンツの充実に努めてまいります。
四つは、国際会議への参加です。世界遺産関係は、昨年のパリに引き続いて、第36回世界遺産委員会サンクトペテルブルク会議(ロシア連邦)に、自然遺産関係では、第5回世界自然保護チェジュ会議(韓国)に参加しました。
、
五つは、海外の世界遺産、世界無形文化遺産、世界記憶遺産の視察です。今年は、5回、海外に出ました。1月にブルガリアとルーマニア、3月に韓国、6月にフィンランドとロシア連邦、9月に韓国、12月は、アラブ首長国連邦、中央ヨーロッパのドイツ、オーストリア、スロベニア、チェコ、ポーランド、スロバキア、ハンガリーの合計13か国です。
同じ世界遺産地等でも、春、夏、秋、冬の季節が異なる時期では、まちの風景や行事にも違いがあります。また、「ヨーロッパ」と「アジア」の文化の比較、それに、世界遺産の数が上位にある国、イタリア、スペイン、中国、フランス、ドイツ、英国、ロシア連邦の世界遺産の保護管理システムの研究です。
六つは、国内の世界遺産、世界無形文化遺産、世界記憶遺産ゆかりの地、世界遺産の候補地などの視察です。1月に「山本作兵衛ゆかりの筑豊地方」(福岡県田川市、飯塚市)、4月に「五箇山」(富山県南砺市)、「白川郷」(岐阜県白川村)、「紀伊山地の霊場」(奈良県吉野町)、「四国霊場」(徳島県阿波市、吉野川市)、5月に「知床」(北海道斜里町)、6月に「壬生の花田植え」(広島県北広島町)、「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬県富岡市、伊勢崎市)、8月に「姫路城」(兵庫県姫路市)と「若狭小浜」(福井県小浜市)、10月に「城下町金沢」(石川県金沢市)と「霊峰白山」(石川県白山市、福井県勝山市)、「古市古墳群」(大阪府羽曳野市、藤井寺市)、11月に「古都京都」(京都府京都市、滋賀県大津市)、12月に「古市古墳群」(大阪府羽曳野市)、「飛鳥・藤原の宮都」(奈良県橿原市、明日香村)、「四国霊場」(徳島県徳島市、阿南市、小松島市)などです。
また、このほかにも、個人的に興味のあった「宗谷岬」(北海道稚内市)、「納沙布岬」(北海道根室市)、「襟裳岬」(北海道えりも町)、「サロベツ原野」(北海道豊富町、幌延町)、「根釧台地」(北海道根室市、釧路市)、「近江八幡」(滋賀県近江八幡市)、「白米千枚田」(石川県輪島市)、「一乗谷」(福井県福井市)、「倉敷川畔」(岡山県倉敷市)、「豊町御手洗」(広島県呉市)などです。
七つは、下記の通り、テレビとラジオへの出演、新聞社からの取材です。論稿では、中国新聞朝刊【今を読む】で、「世界遺産条約40年の節」(2012年6月19日)、岩手日報【日報論壇】で、「復興への記録を後世に」(2012年4月2日)、山陰中央新報朝刊【談論風発】で、「石見銀山」世界遺産5周年/7月2日を登録記念日に」(2012年7月7日)、北海道新聞夕刊で、「利尻・礼文・サロベツ原野/大雪山と日高山脈 世界遺産暫定リスト入りを」(2012年2月10日)を発表させていただく機会を与えていただきました。
<テレビ>
●NHK徳島放送局『とく6徳島』「阿波遍路道」(2012年11月16日)
●テレビ朝日『やじうまテレビ!』「ニュース解説」(2012年2月24日)
<ラジオ>
●東海ラジオ放送「安蒜豊三 夕焼けナビ」<聞きナビ>(2012年2月13日放送)
●FMはつかいち「eco De ナイト」(2012年1月11日放送)
<新聞>
●北海道新聞朝刊「マリモの起源 阿寒湖を世界遺産に 釧路市など運動開始」(2012年1月5日)
●日本経済新聞朝刊「世界遺産 いいことずくめ?」(2012年1月7日)
●西日本新聞朝刊「世界記憶遺産の全貌紹介」(2012年1月25日)
●西日本新聞朝刊文化欄 コラム 風車 「MOWデータ・ブック」(2012年1月27日)
●中国新聞朝刊「世界記憶遺産データ網羅 被爆資料の登録提言も」(2012年2月2日)
●北海道新聞夕刊「利尻・礼文・サロベツ原野/大雪山と日高山脈 世界遺産暫定リスト入りを」
(2012年2月10日)
●毎日新聞朝刊「こんにちは広島 世界記憶遺産データ・ブックを発刊、
「負の遺産」多いが貴重なものばかり」(2012年2月14日)
●岩手日報【日報論壇】「復興への記録を後世に」(2012年4月2日)
●中国新聞朝刊【今を読む】「世界遺産条約40年の節目」(2012年6月19日)
●山陰中央新報朝刊【談論風発】「石見銀山」世界遺産5周年/7月2日を登録記念日に」(2012年7月7日)
●東京新聞朝刊「世界遺産レース し烈」(2012年7月14日)
●北國新聞朝刊「めざそう!世界遺産 『城下町金沢』と『霊峰白山』実現へ可能性探る
13日・金沢でセミナー」 (2012年10月2日)
●北國新聞朝刊「ユネスコ前事務局長が講演 世界遺産セミナー」(2012年10月14日)
●朝日新聞夕刊「平城宮跡整備「異議あり」」(2012年11月21日)
私事では、2011年4月に還暦を迎え、心機一転、新しい取組みです。なかでも、facebookを通じて、旧友、校友、知人とのネットワークの構築と、これまでの自分史をタイムラインで整理することを始めました。
さて、2013年は巳年、果たしてどんな年になるのでしょうか。2013年も時間の許す限り、地球的、人類的な視野に立って、世界の時流を読みつつ、世の中に役立つシンクタンクの舵取りを世界遺産総合研究所を中心に展開してまいります。長期的には10年、中期的には5年を視野に入れて、これまでに蓄積してきた知識と経験の集大成と利活用、応用と発展が課題です。
昨年も書きましたが、世界の各地を歩いてみて思うことは、ここ10年、日本の国力や国際競争力が急速に低下している事を色々な面で感じます。政治家や当該分野の指導者の責任かもしれませんが、あらゆる分野において、相当、気を引き締めていかないと、見通しの甘さ、放漫、行き詰まり、債務超過、破綻、中止・廃止・閉鎖、混乱、敗戦処理など負のスパイラル現象が露呈、表面化し、国をはじめ、地方公共団体、企業、大学などの経営破綻が相次ぐのではないかと、大変、危惧しています。
2010年のJAL(日本航空)、2011年の原発事故の東京電力などの大企業の事例が象徴的です。なかでも、最も警戒しなければならないのは、米国やEUの財政危機、破綻に伴う日本の国家財政への影響です。
国家とは何なのか、尖閣諸島や竹島などの領土問題、国防のあるべき姿、国家の財政の健全化、国際援助の見直し、政権を担う当事者は、もっと真摯に真剣に取り組まないと、わが国は取り返しのつかない事態に陥ることを大変憂慮しています。団体主義的風土が陥りやすい意思決定のメカニズムの弊害が様々な局面で露呈、右往左往し迷走しています。
転じて明るい話題は、世界遺産分野では、2013年の第37回世界遺産委員会プノンペン会議で、日本の「富士山」と「武家の古都鎌倉」の世界遺産登録の実現が待望され、日本の光を見出したいものです。
世界遺産条約の目的は、かけがえのない世界遺産を、あらゆる脅威や危険から守っていくこと、また、その為の国際的な援助の体制をつくっていくことも大切なのですが、文化財の保存や修復など理工学的なアプローチに傾斜し過ぎている様に思います。
自然遺産や文化遺産への脅威や危険、これらへの対策については、科学的な知見も重要なのですが、人為的な脅威や危険については、政治や経済など社会科学的な見地からのアプローチが最も重要であり、地球と人類の遺産を守っていく仕組み、メカニズムなどパラダイムの転換が必要です。
2013年も、異文化である「洋の文化」、日本らしい「和の文化」、そして、「和洋折衷の文化」などその違いや類似する点などを考える文化空間を充実させ、固定観念や先入観にとらわれない「交流」と「対話」を重ねていきたいと考えています。また、2011年12月に、「世界記憶遺産データ・ブック」を発刊したことを契機に、人間、人類、世界、地球などの「記憶」や「記録」についての調査研究も深化させていきます。
なにはともあれ、健康が第一、無理をせず、自然体で事に臨んでいきたいものです。引き続きご支援をお願い致します。
2012年12月吉日
古田 陽久
|