世界記憶遺産データ・ブック−2012年版−








世界記憶遺産データ・ブック−2012年版−  
著者 古田陽久、古田真美
企画・編集 世界遺産総合研究所
発行 シンクタンクせとうち総合研究機構
定価 2625円(本体2500円)
ISBN 978-4-86200-164-1
発行 2011年12月23日
判型 A5
頁数 144ページ

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【本書の特色】ユネスコの最新の世界記憶遺産を特集

世界記憶遺産は、世界遺産、世界無形文化遺産と共にユネスコが所管する三大遺産事業の一つ。本書は、世界記憶遺産の仕組み、世界記憶遺産リストに登録されている日本の「山本作兵衛コレクション」など245件の世界記憶遺産など、ユネスコの世界記憶遺産プログラムの全体像を明らかにする日本初のデータ・ブックである。






【目  次】





 ■世界記憶遺産 概説 5



 ■世界記憶遺産 概要 9



   □ユネスコとは 10 

   □世界記憶遺産とは 10  

   □世界記憶遺産が準拠するプログラム 10  

   □世界記憶遺産の成立と背景 10  

   □世界記憶遺産プログラムの略史 11

   □世界記憶遺産の理念と目的 12 

   □世界記憶遺産プログラムの主要規定 12 

   □国際諮問委員会 13  

   □国際諮問委員会の委員 13 

   □国際諮問委員会の開催歴と登録件数 14                              

   □国際諮問委員会の補助機関 14

   □世界記憶遺産の事務局 15                              

   □世界記憶遺産の数(98か国、3国際機関、1民間財団の245件) 15 

   □世界記憶遺産の種類 15  

   □世界記憶遺産の選定基準 17  

   □世界記憶遺産への登録手続き 18 

   □世界記憶遺産の登録推薦書類の評価 18

   □世界記憶遺産への危険や脅威 18

   □世界記憶遺産リストからの登録抹消 18

   □世界記憶遺産基金 19 

   □世界記憶遺産の日本の窓口 19 

   □日本の世界記憶遺産 19

   □日本の今後の世界記憶遺産候補 19

   □世界記憶遺産の今後の課題 20

   □世界記憶遺産を通じての総合学習 20

   □今後の世界記憶遺産委員会等の開催スケジュール等 21



   世界記憶遺産保護の為の一般指針 22-23

   世界記憶遺産の登録推薦書式 24-25






    図表で見るユネスコの世界記憶遺産



   世界記憶遺産の分布図 26-27

   世界記憶遺産の数 28-29

  ※世界記憶遺産登録の流れ 30






 ■世界記憶遺産 地域別・国別 31



   アフリカ(AFRICA) 32 

   アラブ諸国(ARAB STATES) 35 

   アジア(ASIA) 37

   太平洋(the PACIFIC) 51

   ヨーロッパ(EUROPE) 53 

   北米(NORTH AMERICA) 80 

   ラテンアメリカ・カリブ(LATIN AMERICA and the CARIBBEAN) 83 






 ■世界記憶遺産 登録年別 97






 ■世界記憶遺産 国別・収蔵機関別 107



  ※略 語 130






 ■索引 131    



  国名(50音順) 132

  国名(地域別50音順) 134

  物件名(50音順) 136









 ユネスコ(国連教育科学文化機関 本部 パリ)は、1992年に、歴史的な文書、絵画、音楽、映画などの世界の記録遺産(Documentary Heritage)を保存し、利活用することによって、世界の記録遺産を保護し、促進することを目的として、「世界記憶遺産」プログラム(Memory of the World Programme)を開始した。



 この「世界記憶遺産」(Memory of the World  略称MOW)のプログラムの目的は、ユネスコ加盟国が自国の記憶遺産についての認識を高め、自国の記憶遺産を保護する上で、国、団体、国民の利益を呼び起こすことと同時に、世界的に、または、国単位で、地域的に意義のある記憶遺産の保存を奨励し、記憶遺産ができるだけ多くの人に利用できるようにすること、コンパクト・ディスク、ウェブサイト、アルバム、本、ポストカードなどの製品を作成し、記憶遺産の概念を促進することなどである。



 この「世界記憶遺産」プログラムの事務局は、ユネスコ本部の情報・コミュニケーション局知識社会部ユニバーサルアクセス・保存課が担当している。



 「世界記憶遺産」は、2年毎に開催される国際諮問委員会(略称IAC)で、世界にとって意義のある記憶遺産が選考される。国際諮問委員会は、19979月にウズベキスタンのタシケント 、19996月にオーストリアのウィ−ン、20016月に韓国の慶州 、20038月にポーランドのグダニスク、20056月に中国の麗江、20076月に南アフリカのプレトリア、20097月にバルバドスのブリッジタウン、20115月に英国のマンチェスターの各都市で開催されている。



 「世界記憶遺産」には、これまでに、中国の「清代歴史文書」、韓国の「朝鮮王朝実録」、英国の「マグナ・カルタ」、フランスの「人権宣言」、ドイツの「ベートーベンの交響曲第九番の草稿」や「ゲーテの直筆の文学作品」、オランダの「アンネ・フランクの日記」、それに、オランダ、インド、インドネシア、南アフリカ、スリランカの複数国5か国にまたがる「オランダの東インド会社の記録文書」、オランダ、ブラジル、ガーナ、ガイアナ、オランダ領アンティル、スリナム、英国、アメリカ合衆国の8か国にまたがる「オランダの西インド会社の記録文書」など98か国、赤十字国際委員会(ICRC)、国際連合ジュネーブ事務局(在ジュネーブ)、国際連合パレスチナ難民救済事業機関(在エルサレム)の3国際機関、クリストファー・オキボ財団 (COF)の1民間財団の245件が「世界記憶遺産リスト」に登録されている。



 「世界遺産」に関連したものでは、カザフスタンの「コジャ・アフメド・ヤサヴィの写本」、中国の「麗江のナシ族の東巴古籍」、韓国の「海印寺の大蔵経板」、オーストラリアの「オーストラリアの囚人記録集」、ドイツの「ライヒエナウ修道院にある彩飾写本」、スロヴァキアの「バンスカー・シュティアヴニッツアの鉱山地図」などが挙げられる。



 また、「世界無形文化遺産」に関連したものでは、エストニア、ラトヴィア、リトアニアの「バルトの道−自由への行進での三国を繋ぐ人間の鎖」や、ウルグアイの「カルロス・ガルデルの原盤− ホラシオ・ロリエンテのコレクション(19131935年)」などが挙げられる。



 日本からの「世界記憶遺産」は、20115月に英国のマンチェスターで開催された第10回国際諮問委員会において、「山本作兵衛コレクション」(Sakubei Yamamoto Collection)が、日本で初めて選定され、イリナ・ボコバ・ユネスコ事務局長の承認を得て、ユネスコと申請者(福岡県田川市長及び公立大学法人福岡県立大学学長)との間で、登録に関する契約が締結され、正式にメモリー・オブ・ザ・ワールド(世界記憶遺産)となった。







 「山本作兵衛コレクション」は、筑豊の炭坑(ヤマ)の文化を見つめた画家、山本作兵衛氏(18921984年 福岡県飯塚市出身)の墨画や水彩画の炭鉱記録画、それに、記録文書などの697点で、これらは福岡県指定有形民俗文化財に指定されており、保管・展示は、田川市石炭・歴史博物館(福岡県田川市)が行なっている。



 「山本作兵衛コレクション」を登録申請した経緯は、そもそも、ユネスコの世界遺産暫定リスト記載物件である「九州・山口の近代化産業遺産群」の構成資産の一つとして、田川市内にある旧三井田川鉱業所伊田竪坑櫓などが名乗りを挙げたことに始まる。構成資産入りを目指していたが、残念ながら、200910月の国内審査では構成資産の候補から外れてしまった。



 しかし、関連資料として紹介した山本作兵衛の作品を、20091月に現地を訪れた海外の専門家であるマイケル・ピアソン氏(オーストラリア国立大学客員教授)が絶賛、日本社会の近代化の特徴をよくとらえた「炭鉱記録画の代表作」であると、歴史的な意義を高く評価したことが契機となって、20103月末に図録などを添えた登録推薦書類をユネスコに提出、日本初の「世界記憶遺産」の誕生となったわけである。



 20135月頃に開催される第11回国際諮問委員会では、日本政府の推薦では初めてとなる、仙台藩の日欧交渉を伝える江戸時代の「慶長遣欧使節関係資料」(仙台市博物館所蔵)、それに、平安時代の藤原道長の自筆日記である「御堂関白記」(近衛家の陽明文庫が所蔵)の国宝2件が世界記憶遺産の登録を目指している。



 「世界記憶遺産」は、人類の歴史的な文書や記録など忘れ去らてはならない貴重な記録遺産であり、地球上のかけがえのない自然遺産と人類が残した有形の文化遺産である「世界遺産」、人類の創造的な無形文化遺産の傑作である「世界無形文化遺産」と共に消滅、或は、忘却されることのない様に、あらゆる脅威や危険から保護し、恒久的に保存していかなければならないものである。



 「世界記憶遺産」は、「世界遺産条約」や「無形文化遺産保護条約」の様に多国間条約に基づくものではないが、いつの日か、「世界記憶遺産条約」が採択される日が来るかもしれない。



 昨今、「遺産」ブームで、各分野を代表する「遺産」が選定されている。「世界記憶遺産」は、「世界遺産」、「世界無形文化遺産」と共にユネスコが所管する三大遺産事業の一つであるが、混同されている事柄もあり、それぞれの「遺産」の対象、目的、仕組みなどの違いを明らかにしておかなければならない。  



 本書は、「世界記憶遺産」の仕組み、「世界記憶遺産リスト」に登録されている日本の「山本作兵衛コレクション」など245件の「世界記憶遺産」など、ユネスコの「世界記憶遺産」プログラムの全体像を明らかにする日本初のデータ・ブックであり、当シンクタンクとしても、この分野の研究領域も広げていきたいと考えている。



 今後、この分野の研究の広がりと深化、それに、世界、そして、日本の歴史上、重要な出来事、例えば、「広島・長崎原爆被爆資料」などの記録も「世界記憶遺産」に登録していくことは、人類史的にも大きな意義がある様に思う。



 本書を出版するにあたって、ユネスコ本部(パリ)の情報・コミュニケーション局知識社会部ユニバーサルアクセス・保存課のジョア・スプリンガー氏、それに、山本作兵衛氏のご子息、山本照雄氏、孫の緒方惠美氏をはじめ、数多くの方の助言とご協力を頂いたことに感謝したい。



                           古田陽久  古田真美









■書評 2012年1月27日(土曜日) 西日本新聞朝刊文化欄 「風車」




MOWデータ・ブック

 世界遺産ガイドで定評のある、広島市のシンクタンクせとうち総合研究機構から、『世界記憶遺産データ・ブック』が昨年末に出た。もちろん、福岡県田川市の「山本作兵衛コレクション」も掲載されている。

 世界記憶遺産(MOW)の概説・概要とともに、245件の地図付きの国別リストや各種統計・索引が完備されて、MOWを知る上では必須の一冊となっている。今まで日本に類書はない。昨年5月の日本初選定・登録以来、「騒動」状態が継続中であるが、「世界遺産」との混同が一般的であろうし、メディア報道でも、全体像がつかめない状況だった。これでかなりの疑問が解決できる。国別なら、ドイツ・オーストリア・ロシア・ポーランド・韓国(他2国)の順に多い。東アジアの近隣諸国では韓国9件(1件はフランス国立図書館蔵)、中国7件、モンゴル2件。

 山本作兵衛も「アンネの日記」やベートーヴェンの楽譜と並べられるが、いささか位相が違うように感じてきた。また、奴隷記録や韓国の「光州民主化運動」もよく紹介されていたが、実のところ歴史的評価の定まった「国宝」的な事物との差異がわからなかった。

 ポーランドの労働組合連帯やベルリンの壁の建設と崩壊の記録群もMOWだ。放置すれば散逸していく現代史の証言も積極的に指定している。作兵衛コレクションの詳細な解説はないにしても、全データから見えてくるものは大きい。




■本書の紹介記事



  2012年1月25日(水) 西日本新聞朝刊 福岡ワイド版 「世界記憶遺産の全貌紹介」
 2012年1月27日(金) 西日本新聞朝刊文化欄 コラム 風車 「MOWデータ・ブック」
 2012年2月2日(木) 中国新聞朝刊「世界記憶遺産データ網羅 被爆資料の登録提言も」
 2012年2月14日(火) 毎日新聞朝刊広島版『こんにちは広島』
             世界記憶遺産データ・ブックを発刊、「負の遺産」多いが貴重なものばかり」





















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