ラムサール条約登録湿地 日本国内33か所に












                                                    2005年11月8日


  第9回ラムサール条約締約国会議が、2005年11月7日〜15日に、ウガンダの首都カンパラで開催されました。 これまで、日本ラムサール条約登録湿地は13ありましたが、新たに、北海道の「サロベツ原野」、「雨竜沼湿原」、「濤沸湖」、福島県、群馬県、新潟県の3県にまたがる「尾瀬」、栃木県の「奥日光の湿原」、福井県の「三方五湖」、和歌山県の「串本沿岸海域」、鳥取県と島根県の2県にまたがる「中海」、山口県の「秋吉台地下水系」、大分県の「くじゅう坊ガツル・タデ原湿原」、鹿児島県の「藺牟田池」、「屋久島永田浜」、沖縄県の「慶良間諸島海域」、「名蔵アンパル」など20か所が新たに登録され、国内の条約湿地は合計33か所になりました。



ラムサール条約の概要




正式名称 特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約
       (Convention on Wetlands of International Importance especially as Waterfowl Habitat)

ラムサール条約の起源
1971年2月2日、イランのカスピ海沿岸の町ラムサ-ルで開催された「湿地及び水鳥の保全のための国際会議」において、ラムサール条約が作成されました

ラムサール条約の発効 1975年12月21日

ラムサール条約の目的


 世界の湿地、すなわち、湿原、沼沢地、干潟等は、多様な生物を育み、特に水鳥の生息地として非常に重要です。しかし、湿地は、干拓や埋め立て等の開発の対象になりやすく、その破壊を食い止める必要性が認識されるようになりました。湿地には国境をまたぐものもあり、また、水鳥の多くは国境に関係なく渡りをすることから、国際的な取組みが求め られました。そこで、ラムサール条約は、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地及びそこに生息・生育する動植物の保全を促し、湿地の賢明な利用(Wise Use)を進めることを目的としています。

ラムサール条約の特色

 ラムサール条約は、本格的に環境の観点から作成された多国間の環境条約の中でも先駆的な存在であり、現在では広く用 いられるようになった持続可能な利用(Sustainable Use)という概念を、その採択当初から賢明な利用(Wise Use)という原則で取り入れてきました。


ラムサール条約の主要規定

●ラムサール条約の各締約国が自国の領域内にある国際的に重要な湿地を指定し、湿地の登録簿に掲載すること(第2条1、2 )

●ラムサール条約登録湿地の保全及び湿地の適正な利用(賢明な利用)を促進するため、計画を作成、実施すること(第3 条)

●ラムサール条約登録湿地であるかを問わず、領域内の湿地に自然保護区を設けることにより湿地と水鳥の保全を促進する こと(第4条1)

●湿地の研究、管理及び監視について能力を有する者の訓練を促進すること(第4条5)


ラムサール条約の登録基準

1999年にコスタリカで開催された第7回締約国会議で、登録基準が設定されました。

基準グループA:代表的、希少、または、固有な湿地タイプを含む湿地

基準1 適当な生物地理区内に、自然の、または、自然度が高い湿地タイプの代表的、希少、または、固有な例を含む湿地がある場合。


基準グループB:生物多様性の保全のために国際的に重要な湿地

基準2 危急種、絶滅危惧種、または、近絶滅種と特定された種、また絶滅の恐れのある生態学的群集を擁している場合。

基準3 特定の生物地理区における生物多様性の維持に重要な動植物種の個体群を擁している場合。

基準4 生活環境の重要な段階において動植物種を支えている場合、または、悪条件の期間中に動植物に避難場所を提供している場合。

基準5 定期的に2万羽以上の水鳥を擁している場合。

基準6 水鳥の一の種、または、亜種の個体群において、個体数の1%を定期的に擁している場合。

基準7 固有な魚類の亜種、種、または、科、生活史の一段階、種間相互作用、湿地の利益、もしくは、価値を代表する個体群の相当な割合を維持しており、それによって世界の生物多様性に貢献している場合。

基準8 魚類の重要な食物源であり、産卵場、稚魚の生育場であり、または、湿地内、もしくは、湿地外の漁業資源が依存する回遊経路となっている場合。


ラムサール条約の締約国数

147か国(2005年11月現在)

ラムサール条約の登録湿地数


1,524か所(2005年11月現在)

ラムサール条約の登録湿地の総面積

129,2百万ha(2005年11月現在)

ラムサール条約締約国会議の開催場所


  第1回 1980年11月 カリアリ(イタリア)
  第2回 1984年5月 フローニンヘン(オランダ)
  第3回 1987年5月 レジャイナ(カナダ)
  第4回 1990年6月 モントルー(スイス)
  第5回 1993年6月 釧路
  第6回 1996年3月 ブリスベン(豪)
  第7回 1999年5月 サン・ホセ(コスタリカ)
  第8回 2002年11月 バレンシア(スペイン)
  第9回 2005年11月 カンパラ(ウガンダ)


日本のラムサール条約締約年 1980年


日本のラムサール条約登録湿地
 33か所

  名称 所在地 面積 登録年月日

○釧路湿原(くしろしつげん) (北海道)  7,863 ha  昭和55年(1980年) 6月17日
○クッチャロ湖 (北海道)  1,607 ha 平成 元年(1989年) 7月 6日
○ウトナイ湖 (北海道)  510 ha 平成 3年(1991年) 12月12日
○霧多布湿原(きりたっぷしつげん) (北海道)   2,504 ha 平成 5年(1993年) 6月10日
○厚岸湖・(あっけしこ・)別寒辺牛湿原(べかんべうししつげん) (北海道)  4,896 ha 平成 5年(1993年) 6月10日
○宮島沼(みやじまぬま) (北海道)  41 ha 平成14年(2000年) 11月18日
○サロベツ原野(北海道) 平成17年(2005年) 11月8日
○雨竜沼湿原(うりゅうぬま)(北海道) 平成17年(2005年) 11月8日
○濤沸湖(とうふつこ)(北海道) 平成17年(2005年) 11月8日
○阿寒湖(北海道) 平成17年(2005年) 11月8日
○野付半島・野付湾()(北海道)のつけはんとうのつけわん 平成17年(2005年) 11月8日
○風蓮湖(ふうれんこ)(北海道) 平成17年(2005年) 11月8日
○仏沼(青森県) 平成17年(2005年) 11月8日
○伊豆沼・内沼(いずぬま・うちぬま) (宮城県)  559 ha  昭和60年(1985年) 9月13日
○蕪栗沼・周辺水田(かぶくりぬま)(宮城県) 平成17年(2005年) 11月8日
○尾瀬(福島・群馬・新潟県) 平成17年(2005年) 11月8日
○奥日光の湿原(栃木県) 平成17年(2005年) 11月8日
○谷津干潟(やつひがた) (千葉県)   40 ha 平成 5年(1993年) 6月10日
○佐潟(さかた) (新潟県)   76 ha 平成8年(1996年) 3月28日
○片野鴨池(かたのかもいけ) (石川県)  10 ha 平成 5年(1993年) 6月10日
○三方五湖(みかたごこ)(福井県) 平成17年(2005年) 11月8日
○藤前干潟(ふじまえひがた) (愛知県)  323 ha  平成14年(2000年) 11月18日
○琵琶湖(びわこ) (滋賀県) 65,602 ha 平成 5年(1993年) 6月10日
○串本沿岸海域(和歌山県) 平成17年(2005年) 11月8日
○中海(鳥取・島根県) 平成17年(2005年) 11月8日
○宍道湖(島根県) 平成17年(2005年) 11月8日
○秋吉台地下水系(山口県) 平成17年(2005年) 11月8日
○くじゅう坊ガツル・タデ原湿原(大分県) 平成17年(2005年) 11月8日
○藺牟田池(いむたいけ)(鹿児島県) 平成17年(2005年) 11月8日
○屋久島永田浜(鹿児島県) 平成17年(2005年) 11月8日
○慶良間諸島海域(けらま)(沖縄県) 平成17年(2005年) 11月8日
○名蔵アンパル(沖縄県) 平成17年(2005年) 11月8日
○漫湖(まんこ) (沖縄県)  58 ha 平成11年(1999年) 5月15日



日本の重要湿地500



ラムサール条約の事務局

 ラムサール条約8条1の規定に基づき、IUCN(国際自然保護連合)が、他の機関又は政府が指定される時まで事務局の任務を行っています。また、ラムサール条約の寄託者には、ユネスコが指定されています(第9条3)。


ラムサール条約の予算

 締約国は、締約国会議で採択する分担率に従い、予算にかかる分担金を支払うこととなっています(第6条6)。2004年のわが国の分担金は、約69万スイス・フラン(米国に次いで拠出第2位)。


ラムサール条約の日本の事務局 国際ウェットランドセンター(釧路市)


備 考

 世界遺産で、登録範囲内にラムサール条約登録湿地を含むもの、或は、ラムサール条約登録湿地で、世界遺産になっているものは下記の通りです。









 
締約国 ラムサール条約登録湿地 世界遺産
Algeria La Vallee d'Iherir Tassili n'Ajjer 複合遺産
Australia Great Sandy Strait Fraser Island 自然遺産
Australia Kakadu National Park Kakadu National Park 複合遺産
Bangladesh Sundarbans The Sundarbans 自然遺産
Bulgaria Srebarna Srebarna Nature Reserve 自然遺産
Canada Peace-Athabasca Delta
Whooping Crane Summer Range
Wood Buffalo National Park 自然遺産
Costa Rica Isla del Coco Cocos Island National Park 自然遺産
Democratic Rep. of the Congo Parc national des Virunga Virunga National Park  自然遺産 危機遺産
France Baie du Mont Saint-Michel Mont-Saint-Michel and its Bay 文化遺産
Hungary / Slovak Republic Baradla Cave System and related wetlands Caves of Aggtelek Karst and Slovak Karst 
自然遺産
Hungary Hortobagy Hortobagy National Park 文化遺産
India Keoladeo National Park Keoladeo National Park 自然遺産
Lebanon Tyre Beach Tyre 文化遺産
Mauritania Banc d'Arguin Banc d'Arguin National Park 自然遺産
Niger Parc national du "W" W National Park of Niger 自然遺産
Philippines Tubbataha Reef Marine Park Tubbataha Reef Marine Park 自然遺産
Romania Danube Delta Danube Delta 自然遺産
Russian Federation Selenga Delta Lake Baikal 自然遺産
Senegal Djoudj Djoudj National Bird Sanctuary  自然遺産
危機遺産
Slovenia Skocjanske jame (Skocjan Caves) Skocjan Caves  自然遺産
Spain Donana Donana National Park 自然遺産
Sweden Sjaunja Laponian Area  複合遺産
Tunisia Ichkeul Ichkeul National Park  自然遺産 危機遺産
United States of America Everglades Everglades National Park  自然遺産 危機遺産





参考文献
世界遺産ガイドー世界遺産条約編ー
世界遺産ガイド −世界遺産の基礎知識−
世界遺産ガイド −図表で見るユネスコの世界遺産編−
世界遺産キーワード事典
世界遺産ガイド −国立公園編−
世界遺産ガイド −自然保護区編−
世界遺産ガイド −自然景観編−
世界遺産ガイド −日本編 −2004改訂版
誇れる郷土ガイド −日本の国立公園編 −
















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