第5回世界自然保護チェジュ会議 |
第5回世界自然保護チェジュ会議は、2012年9月6日から15日までの10日間、韓国の済州島の済州国際コンベンションセンターで開催された。 世界自然保護会議は、IUCN(国際自然保護連合)が4年ごとに主催する世界最大規模の自然環境関連の国際会議で、“環境オリンピック”とも呼ばれている。 世界遺産研究者の一人として、以前から、一度は参加してみたい国際会議の一つであったことから、今回、一般参加することにした。 世界の153か国から、5000人の自然保護の専門家を含む10000人の参加者があり、600ものイベントなどが開催され、大変盛況だった。 今回の会議のテーマとスローガン“Nature+”は、自然の回復力を高めること、すなわち、気候変動などの変化に対する自然と人間の適応力を高めることが目的であった。 地域での保全の取り組みから、自然の回復力を高めることがどのように可能で、また、なぜグローバルなレベルでの対応が必要とされているのか、これらの課題の解決に向けての道筋を見い出せたような気がする。 韓国には、10の世界遺産がある。そのうち、2007年に登録された「済州火山島と溶岩洞窟群」(Jeju Volcanic Island and Lava Tubes)は、韓国の最高峰・漢拏山(1950m)が象徴的な、韓国で唯一の世界自然遺産である。その自然景観と地形・地質が評価されている。 世界自然遺産・「済州火山島と溶岩洞窟群」は、主に、「漢拏山自然保護区」、「拒文オルム(岳)溶岩洞窟系」、「城山日出峰」など5つの構成資産からなる。 また、分野は異なるが、海女によって、海の安泰、豊作、豊漁を村の守護神に祈願する「済州チルモリ堂燃灯グッ」が、2009年に世界無形文化遺産の「代表リスト」に登録されている。 「済州チルモリ堂燃灯グッ」は、時期的に見ることが出来なかったが、済州島の東部にある済州民俗村博物館は、1890年代の伝統家屋100棟以上が、そのまま保存された野外博物館で、済州島の歴史や民俗を知るうえで、大変、勉強になった。 伝統的な家屋は、実際に済州道の人々が暮らしていた家を柱から石1個までそのまま持ってきたもので、ほぼ完璧に復元していた。中にも生活用具や、農具、家具など約8000点の民俗資料が展示されており、当時の暮らしぶりが観察できる施設となっていた。 一般民家の他に、巫女信仰地区、流刑者を収容していた牢獄、海女の家など島の歴史、風俗が垣間見れる建物もあった。 韓国には、これまで、何度も行っているが、済州島は初めてである。こうした機会に、韓国の島が育んだ雄大な自然環境、それに、先人が残した伝統的な行事が育まれた豊かな海にも思いを馳せることができた。 古田陽久 |