第37回世界遺産委員会プノンペン会議 世界遺産は、19増で、981件(自然遺産 193 複合遺産 29 文化遺産 759) 世界遺産初出国は、レソト、フィジー、カタールの3か国 シリアの6件、紛争激化で危機遺産登録 危機遺産は、7増 1減で、44物件 2014年の第38回世界遺産委員会の開催地は、カタールの首都ドーハ |
毎年開催されるユネスコの世界遺産委員会は、私たち、世界遺産の研究者にとって、新年を迎える様な新たな気持ちにさせられる。 今年の第37回世界遺産委員会は、2013年6月16日から27日(16日は開会式、27日はシエムリアプで閉会式、実質的な審議は、17日~26日)まで、カンボジアの首都プノンペン市にあるピース・パレス(首相府 新館)で開催された。開会式では、10世紀のクメール王朝時代の2体の石像が、ニューヨーク・メトロポリタン美術館のエミリー・K・ラファティー館長からカンボジアのフン・セン首相に返還された。 カンボジアは、メコン川、そしてトンレサップ湖という豊かな水資源、北部の森林など肥沃な国土に恵まれている。カンボジアは、9~13世紀は、インドシナ半島最大最強の王国であった。カンボジアの主な産業は、農業と観光で、東南アジアで最大級の石造文化を誇る世界遺産「アンコール遺跡群」(1992年世界遺産登録)には、日本からも数多くの観光客が訪れている。 日本との交流の歴史は長く、朱印船時代には日本人町があり日本との関わりも深い。インドシナ半島での長い戦乱、そして、内戦を経て、1993年に総選挙によって新政府を樹立、1998年の 2回目の総選挙の後、国連の代表権を回復した。1999年からはASEANに正式加盟している。今年2013年は、日本とカンボジアが国交を樹立してから60年となる「日カンボジア友好60周年」、それに「日ASEAN交流40周年」(ASEANの加盟国は、タイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、マレーシアの東南アジア諸国連合の5か国)の記念すべき年でもある。 今年の世界遺産委員会の委員国は、アルジェリア、カンボジア、コロンビア、エストニア、エチオピア、フランス、ドイツ、インド、イラク、日本、マレーシア、マリ、メキシコ、カタール、ロシア連邦、セネガル、セルビア、南アフリカ、スイス、タイ、アラブ首長国連邦の21か国で、幹事国のビューロー・メンバーは、7か国、議長国がカンボジア(議長: ソク・アン氏)、副議長国がアルジェリア、 コロンビア、スイス、タイ、 セネガル、ラポルチュール(報告担当国)は、セルビア(報告担当者: ヤスナ・ズルノヴィッチ氏)が務めた。今回の世界遺産委員会への参加国は、128か国、約1460人が参加した。 世界遺産委員会へは、2003年の第27回世界遺産委員会パリ会議から、毎年、オブザーバー・ステイタスで出席しており、今年で、11回目になる。思い起こせば、パリ(フランス)、蘇州(中国)、ダーバン(南アフリカ共和国)、ヴィリニュス(リトアニア)、クライストチャーチ(ニュージーランド)、ケベック・シティ(カナダ)、セビリア(スペイン)、ブラジリア(ブラジル)、パリ(フランス)、サンクトペテルブルク(ロシア連邦)、プノンペン(カンボジア)と世界の各地をまわってきたことになる。 世界遺産委員会の会期中の議事は、約20項目もあるが、いつも関心をもって聴いているのは、「危機遺産リスト」それに「世界遺産リスト」に登録されている物件の保護管理状況の審議、それに、新たな世界遺産候補物件の登録可否の審議の様子である。 北部アフリカのマリ、アラブ諸国のシリアでは、国内紛争が原因で、かけがえのない世界文化遺産が損傷や消滅の危機にさらされており、国際的な救済措置が必要な状況下にある。シリア(1975年に世界遺産条約を締約)には、現在、「古代都市ダマスカス」、「パルミラの遺跡」、「古代都市アレッポ」など6件が「世界遺産リスト」に登録されている。残念なことに、アフリカのコンゴ民主共和国と同様に、国内の全ての世界遺産が、国家の内戦状況が直面する危険への注意を喚起する為に、「危機遺産リスト」に登録された。 また、ソロモン諸島の世界自然遺産「イースト・レンネル」(1998年世界遺産登録)は、森林の伐採が生態系に悪影響を与えている為、新たに「危機遺産リスト」に登録された。 一方、イランの世界文化遺産「バムとその文化的景観」(大地震による損壊で、2004年に「世界遺産リスト」と「危機遺産リスト」に同時登録)は、地道な復元作業と保護管理状況が改善されたので、「危機遺産リスト」から外れた。 従って、「危機遺産リスト」に登録されている物件は、昨年より6件増えて、44件(危機遺産比率は、昨年の3.95%から4.49%に悪化)になった。 毎年の世界遺産委員会では、世界遺産の候補物件が「世界遺産リスト」に登録するのにふさわしい物かどうか、専門機関のICOMOSとIUCNによる事前評価の結果と世界遺産委員会へ諮問する評価区分と世界遺産委員会での審議の様子、決議の結果に注目している。 今年の注目点は、まず、世界遺産がまだない国である、アフリカのレソト(2003年に世界遺産条約を締約)、アラブ諸国のカタール(1984年に世界遺産条約を締約)と太平洋のフィジー(1990年に世界遺産条約を締約)からの世界遺産の誕生であった。 第2は、初の「水中文化遺産」の誕生。カナダ東部にある16世紀の捕鯨沈没船などの海底遺跡を登録範囲に含む「レッド・ベイのバスク人の捕鯨基地」(ICOMOSの評価は「登録」勧告)であった。 第3は、北朝鮮では2つ目の世界遺産となった、かつての高麗王朝の都であった「開城の史跡群」(ICOMOSの評価は「登録」勧告)。開城工業地区の近くにあり、高麗太祖の王建王陵などの墳墓群、開城時代の南大門、鐘が有名な演福寺、最高教育機関であった成均館(現在は高麗博物館)、市内中心に小高くそびえる子男山と周辺の観徳亭、善竹橋などの史跡が残されている。今回の世界遺産委員会での北朝鮮のデレゲーションは、比較的若手の3名が出席しており、世界遺産登録の実現を、大変喜んでいたのが印象的だ。 第4は、日本からの2つの候補の行方であった。「富士山」(ICOMOSの評価は「登録」勧告)は、除外することを前提にしている「三保松原」の帰趨。登録の主体である「富士山」の山体を展望する地点や景観の扱いについての見解には、特に注目した。 また、2016年の第40回世界遺産委員会での報告を義務づけられるであろう保全状況報告書への反映事項、①文化的景観のアプローチを反映した登録遺産の全体ビジョン ②来訪者戦略 ③登山道の保全方法 ④モニタリングなどの情報提供戦略 ⑤富士山の噴火、或は、大地震などの環境圧力、新たな施設や構造物の建設などの開発圧力、登山客や観光客の増加などの観光圧力など、さまざまな危険に対する危機管理計画に関する進展状況 ⑥管理計画の全体的改定などに関する議論の推移を見守りたかった。 しかしながら、論議は、まさか、インスピレーションでの発言ではあるまいが、ドイツ、メキシコ、セネガル、タイ、マレーシア、カンボジア、ロシア連邦、フランス、カタールなどの委員国が「三保松原」を連呼、構成資産に含める賛成の発言に終始し、「Fujisan、sacred place and source of artistic inspiration」(富士山-信仰の対象と芸術の源泉)は、2013年6月22日(土曜日)現地時間午後15時28分(日本時間午後17時28分)に「登録」決議、結審した。 日本の世界遺産は、これで、文化遺産が13件目、自然遺産が4件で、合計17件になった。 また、今回、自然遺産の候補になっているイタリア南部のシチリア島にある今も噴火活動を続ける活火山、「エトナ山」(標高3326m IUCNの評価は「登録」勧告)が、世界自然遺産としてふさわしいと認められる特質は何なのか、当初、世界自然遺産登録をめざしていた「富士山」との違い(特に地形・地質)を比較してみて、その違いをよく理解できた。 専門機関のICOMOSから「不登録」勧告を受けた「武家の古都・鎌倉」(神奈川県鎌倉市、逗子市、横浜市)の事前撤回は、賢明な判断であったと思う。近年の専門機関の評価の傾向は、「登録」勧告と「不登録」勧告の割合が高くなっている。すなわち、世界的な「顕著な普遍的価値」の重要性の観点から、世界遺産にふさわしいもの、ふさわしくないものをはっきりさせているのである。 しかしながら、これまでの努力と代償は、これからの「鎌倉」にとって、決して無駄なことにはならないだろう。個人的にも、「鎌倉」は、学生時代から馴染みが深く残念ではあるが、この度のICOMOSの評価内容を警鐘、或は、教訓として受け止め、市政においては、今以上に歴史遺産の価値や完全性が損なわれない様な開発抑止の地域づくりやまちづくりへの転換が求められる。 第5は、今回の候補の中で、個人的に好きな物件は、中国の雲南省の「ハニ族の棚田の文化的景観」。元陽の棚田で見る日の出は感動的で、ハニ族の華やかな民族衣装も大変印象的であり、期待通りに、「世界遺産リスト」に登録された。 一方、クロアチアの「ザダルのローマ時代の遺跡群」、ザダルは、アドリア海の東岸、ダルマチア地方の中心として栄えた港湾都市で、日没の夕陽の風景が美しかった印象が今も残っている。既に「世界遺産リスト」に登録されている同国の同じダルマチア海岸沿いの世界遺産都市であるドブロヴニク、スプリット、ポレッチ、トロギール、シベニクとの違いなど、その「顕著な普遍的価値」は認められず、残念ながら、登録には至らなかった。 第6は、締約国間での世界遺産の数である。世界遺産は、数を競うものではないが、2013年6月1日現在、世界遺産の数の上位国は、①イタリア 47 ②スペイン 44 ③中国 43 ④フランス 38 ⑤ドイツ 37 ⑥メキシコ 31 ⑦インド 29 ⑧英国 28 ⑨ロシア連邦 25であった。 今回の委員会で、①イタリア 49(+2) ②中国 45(+2) ③スペイン 44(数は変わらず) ④フランス 38(数は変わらず) ④ドイツ 38(+1) ⑥メキシコ 32(+1) ⑦インド 30(+1) ⑧英国 28(数は変わらず) ⑨ロシア連邦 25(数は変わらず)と上位の順位が入れ替わり、中国がスペインを抜いて世界第2位の世界遺産大国になった。 いずれ、アジアの中国がヨーロッパのイタリアを抜いて、世界一になる日が来ることを、当方は予想している。(因みに、日本は、17(+1)で、ギリシャ、カナダと並んで世界第13位、昨年の第14位から1ランク・アップした。) 今回の世界遺産委員会で、新たに「世界遺産リスト」に登録された物件(Iで表示)は、19件、世界遺産の登録範囲を拡大した物件(OKで表示)は、3件であった。従って、ユネスコの世界遺産の数は、自然遺産が193件(+5)、複合遺産が29件(変わらず)、文化遺産が759件(+14)、合計 981件(160か国)になった。 アフリカ (新登録 2件 登録範囲の拡大 2件) ケニア Mount Kenya-Lewa Wildllife Conservancy [extension of “Mount Kenya National Park/NaturalForest” OK → OK 【登録範囲の拡大】自然遺産 登録基準(ⅶ)(ⅸ) レソト Sehlabathebe National Park [extension of “uKhahlamba / Drakensberg Park” (South Africa), (i)(iii)(vii)(x), 2000) OK/D → OK 【登録範囲の拡大】複合遺産 登録基準(i)(iii)(ⅶ)(ⅹ) ナミビア Namib Sand Sea I → I 自然遺産 登録基準(ⅶ)(ⅷ)(ⅸ)(ⅹ) ニジェール Agadez (centre historique d’Agadez) I → I 文化遺産 登録基準(ii)(iii) アラブ諸国 (新登録 1件) カタール Al Zubarah Archaeological Site D(36) → I(37) → I 文化遺産 登録基準(iii)(ⅳ)(ⅴ) アジア・太平洋 (新登録 8件) 中国 Cultural Landscape of Honghe Hani RiceTerraces I → I 文化遺産 登録基準(iii)(ⅴ) 中国 Xinjiang Tianshan I → I 自然遺産 登録基準(ⅶ)(ⅸ) 北朝鮮 Historic Monuments and Sites in Kaesong I → I 文化遺産 登録基準(ii)(iii) フィジー Levuka Historical Port Town I → I 文化遺産 登録基準(ii)(ⅳ) インド Hill Forts of Rajasthan N(36) → I(37) → I 文化遺産 登録基準(ii)(iii) イラン Golestan Palace R → I 文化遺産 登録基準(i)(ii)(iii)(ⅳ) 日本 Fujisan I → I Fujisan、sacred place and source of artistic inspiration 文化遺産 登録基準(iii)(ⅵ) タジキスタン Tajik National Park (Mountains of the Pamirs) I → I 自然遺産 登録基準(ⅶ)(ⅷ) ヨーロッパ・北アメリカ (新登録 7件 登録範囲の拡大 1件) カナダ Red Bay Basque Whaling Station I → I 文化遺産 登録基準(iii)(ⅳ) ドイツ Water features and Hercules within the Bergpark Wilhelmshöehe I → I 文化遺産 登録基準(iii)(ⅳ) イタリア Villas et jardins des Médicis I → I 文化遺産 登録基準(ii)(ⅳ)(ⅵ) イタリア Mount Etna I → I 自然遺産 登録基準(ⅷ) ポーランド Wieliczka and Bochnia Royal Salt Mines[extension of “Wieliczka Salt Mine” OK → OK 【登録範囲の拡大】文化遺産 登録基準(ⅳ) ポルトガル University of Coimbra – Alta and Sofia R → I 文化遺産 登録基準(ii)(ⅳ)(ⅵ) ウクライナ/ポーランド Wooden Tserkvas of the Carpathian Region in Poland and Ukraine I → I 文化遺産 登録基準(iii)(ⅳ) ウクライナ Ancient City of Tauric Chersonese and its Chora I → I 文化遺産 登録基準(ii)(ⅴ) ラテン・アメリカ/カリブ (新登録 1件) メキシコ El Pinacate and Gran Desierto de Altar Biosphere Reserve I → I 文化遺産 登録基準(ⅶ)(ⅷ)(ⅹ) <注>勧告の区分 I=記載(登録)勧告 R=情報照会勧告 D=記載(登録)延期勧告 N=不記載(不登録)勧告 OK=承認勧告(登録範囲の拡大など) 従って、ユネスコの「世界遺産リスト」に登録されている世界自然遺産は、193件(+5)、世界文化遺産は、759件(+14)、世界複合遺産は、29件(変わらず)、合計で、981件(+19)になった。 昨年の第36回世界遺産委員会サンクトペテルブルク会議に続いて、今年もインターネットで、世界遺産委員会の会議の様子を世界の各地で、ライブ中継で視聴できる様になるなど情報が公開されることは良いことだ。今年は、フランス語、それに、英語、スペイン語、アラビア語、ロシア語での発言が目立った。 今年の世界遺産委員会は、午前のセッションが9時半~12時半、午後のセッションが14時半~19時であった。毎年、審議が長引き、予定が定まらないことが多かったが、今年は、新登録関係の審議は、6月21日~23日と決められており、審議の順番も、弾力的に対応していたのが印象的であった。 一方、いわゆる「逆転登録」に誘導するロビー活動のことが、マスコミで喧伝されるが、会期中にコミュニケーションがとれるのは、時間的にも限られており、基本は常日頃の人間関係や地道なPR活動が背景にあっての最後の詰めの交渉だ。なによりも心配しているのは、「逆転登録」が頻発することにより、「世界遺産リスト」や専門機関の「評価レポート」の信頼性が損なわれることだ。 2014年の第38回世界遺産委員会は、カタールの首都ドーハで開催される。世界遺産の数も981件になり、2014の委員会では、1000件に達するものと思われ節目の年になるが、現状、世界遺産の数の上限数のシーリングは設定されていないので、世界遺産の数1000件は通過点にすぎないことになる。 この委員会では、日本の近代化の原点、発祥の地として、また、アジア諸国の産業発展にも貢献した産業遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬県富岡市、藤岡市、伊勢崎市、下仁田町)の「世界遺産リスト」への登録の可否についても審議される。 それに、複数国にまたがる「シルクロード」の陸の2つの回廊も候補に挙がっている。 キルギス、中国、カザフスタンの3か国にまたがる「天山回廊」、それに、タジキスタンとウズベキスタンの2か国にまたがる「ペンジケント・サマルカンド・ポイケント回廊」だ。2物件として挙がっているが、将来的には海のシルクロードも登録範囲に含めるトランスバウンダリーでシリアルな「シルクロード」の一体的な保存管理が必要だ。いずれにせよ、2014年は、「絹」で盛り上がりそうだ。 また、中国の北京から杭州までを結ぶ総延長2500kmに及ぶ大運河「京杭大運河」、そして、アルゼンチン、ボリビア、チリ、コロンビア、エクアドル、ペルーの6か国にまたがるアンデス山脈のインカ道「カパック・ニャン」の登録にも期待したい。「シルクロード」や「カパック・ニャン」は、多国間条約である「世界遺産条約」であるからこそ実現可能な国境を越えた複数国にまたがる世界遺産登録は、大変意義がある。 「富士山」が世界遺産登録を実現したことにより、日本の「世界遺産暫定リスト記載物件」は、「富岡製糸場と絹産業遺産群」(暫定リスト記載年 2007年 【2014の第38回世界遺産委員会ドーハ会議で登録可否を審議】)、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(2007年)、「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」(2009年)、「九州・山口の近代化産業遺産群」(2009年)、「百舌鳥・古市古墳群」(2010年)、「国立西洋美術館本館」(2007年 【2009年第33回世界遺産委員会で「情報照会」決議】)、「平泉-仏国土を表す建築・庭園及び考古学遺跡群」(【登録範囲の拡大】 2012年)、「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」(2007年)、「宗像・沖ノ島と関連遺産群」(2009年)、「金を中心とする佐渡金山の遺産群」(2010年)、「彦根城」(1992年)、「古都鎌倉の寺院・神社ほか」(1992年)の12件となり、後陣が待機している状況である。 また、自然遺産関係の「奄美・琉球」、文化遺産関係の「四国八十八箇所霊場と遍路路」、「阿蘇-火山との共生とその文化的景観」、「天橋立-日本の文化的景観の原点-」、「錦帯橋と岩国の町割」など国際的に通用する物件かどうかを見極め、追加記載も期待される。今後の課題として「彦根城」、「古都鎌倉」の取扱いなども含めて「世界遺産暫定リスト記載物件」の見直しも必要だ。 カンボジアは、1991年に世界遺産条約を締約、「世界遺産リスト」には、東南アジアの代表的な考古学遺跡である「アンコール」(1992年)とヒンズー教の最高神シヴァ神を祀る「プレア・ヴィヒア寺院」(2008年)が登録されている。 世界無形文化遺産については、2006年に無形文化遺産保護条約を締約、アンコールの創始者であるジャヤバルマン2世の時代からの「カンボジアの王家の舞踊」(2008年)と透かし細工の牛の皮で作られた人形が特徴の伝統芸能「スバエク・トム・クメールの影絵劇」(2008年)が「代表リスト」に登録されている。世界記憶遺産については、ポルポト政権時代の負の遺産「ツール・スレーン虐殺博物館のアーカイヴス」が2009年に登録されている。 世界遺産委員会に先立つ6月8日~16日、世界の16か国とカンボジアからの若者の代表者36名が参集して2013年世界遺産ユース・フォーラムがアンコール遺跡、シェムリアプ、プノンペンの各地で開催された。 尚、2013年5月現在の世界遺産の現状については、「世界遺産データ・ブック-2013年版-」、「世界遺産事典-962全物件プロフィール-2013改訂版」、「世界遺産ガイド-自然遺産編-2013改訂版」、「世界遺産ガイド-文化遺産編-2013改訂版」、「世界遺産ガイド-複合遺産編-2013改訂版」、「世界遺産ガイド-危機遺産編-2013改訂版」、「日本の世界遺産-総集編-」、カンボジアの世界遺産については、「世界遺産ガイド-東南アジア編-」、世界無形文化遺産、世界記憶遺産については、「世界無形文化遺産データ・ブック 2013年版」、「世界記憶遺産データ・ブック 2012年版」をご参考。 古田陽久 テレビ、ラジオ、新聞 <本件に関しての問合せ>世界遺産総合研究所 事務局 |