瀬戸内海国立公園指定70周年に寄せて







 瀬戸内海国立公園は、1934年(昭和9年)3月16日に、雲仙国立公園、霧島国立公園と共に、わが国最初の国立公園として指定され、2004年は、瀬戸内海国立公園指定70周年を迎えた。

 瀬戸内海国立公園は、わが国最大の瀬戸内海、白砂青松の海岸、大小の島々が飛び石のように連なりパノラミックに展開する備讃諸島、塩飽諸島、笠岡諸島、日生諸島、家島諸島、芸予諸島、安芸灘諸島、防予諸島などの多島海の自然景観と穏やかな内海に浮かぶ養殖筏やオリーブ、みかん、レモン、ブルー・ベリーなどの段々畑など人間の生活と産業とに関わりのある文化的景観とが見事に調和し美しい。


 世界遺産とは、1972年にパリで開催された第17回ユネスコ総会で採択された「世界遺産条約」(2004年8月現在の締約国数は178か国)に基づいて、ユネスコの「世界遺産リスト」に登録されている物件である。

 世界遺産は、人類の英知と人間活動の所産を様々な形で語り続ける顕著な普遍的価値をもつ遺跡、建造物群、モニュメントなどの文化遺産、そして、地球上の顕著な普遍的価値をもつ地形・地質、生態系、自然景観、生物多様性などの自然遺産、それに、自然遺産と文化遺産の両方の登録基準を満たす複合遺産に分類される。   

 世界遺産の数は、現在、自然遺産が154物件、文化遺産が611物件、複合遺産が23物件の合計788物件(134か国)で、物件の内容も、年々、多様化している。

 世界遺産条約とは、地球上のかけがえのない自然遺産や文化遺産を、人類全体の財産として、損傷、破壊等の脅威から保護・保存することが重要であるとの観点から、国際的な協力および援助の体制を確立することを本旨としている。

 世界遺産に登録される為には、次の三つの要件を満たす必要がある。

 一つは、他に類例がない顕著な普遍的価値を有するかどうか、そのものの真正性と完全性の証明が求められる。
 二つは、ユネスコが設ける世界遺産の登録基準を満たすかどうかである。
 三つは、世界遺産になってからも恒久的な保護管理措置が計れるどうか、すなわち、
国内法上の法的措置が講じられているか、また、中長期的な保護管理計画があるかどうかなどがIUCN(国際自然保護連合)やICOMOS(国際記念物会議)などの専門機関によって厳しくチェックされる。


 瀬戸内海国立公園を取り巻く自然景観や文化的景観も、時代の推移と共に大きく変容している。かつて文明の海ともいわれた瀬戸内海も、文明に利用される海へと変質を余儀なくされてきた。

 瀬戸内海国立公園の景観保護のあるべき姿として、自然景観だけではなく、史跡、名勝、天然記念物、重要伝統的建造物群保護地区などの文化財も含めた瀬戸内海国立公園の全体的な文化的景観の保存と保護が図れる様な展開が望ましい。 

 その為には、瀬戸内海国立公園内の特別保護地区の範囲の拡大と、恒久的な保護管理措置が図れる面的な行政管理システムの確立、なかでも中国地方と四国地方の行政の一体化、そして、陸域と海域の総合管理が図れる様な保護管理体制が必要だと思う。 

 その為にも、瀬戸内海国立公園の百年の計として、瀬戸内海国立公園の美しい景観をユネスコの世界遺産に登録する為の運動を展開してはどうかと思う。

 この運動の過程において、瀬戸内海国立公園が世界遺産にふさわしいかどうかの可能性について、前述した世界遺産の登録要件に照らし合わせ、その世界的な顕著な普遍的価値を検証してみることも意義あることではないかと思う。




参考文献
● 「世界遺産データ・ブック−2005年版−」(シンクタンクせとうち総合研究機構)
● 「世界遺産ガイド−文化遺産編−W.文化的景観」(  〃  )
● 「誇れる郷土ガイド−中国・四国編−」(  〃  )

参考URL
瀬戸内海国立公園の複合景観を世界遺産に!!!
http://www.dango.ne.jp/sri/setonaikaikokuritsukouen_wa_sekaiisan_ni_nareruka.html




(改訂記録)2004年8月21日第1次改訂








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東洋一の牛窓オリーブ園から瀬戸内海を望む 岡山県邑久郡牛窓町







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