「世界の七不思議」とは、古代ギリシャ、古代ローマ時代における7つの注目すべき建造物のことである。現在一般的には、紀元前2世紀にビザンチウムのフィロンの書いた「世界の七つの景観」の中で選ばれた、古代の地中海地方に存在していた7つの巨大建造物を指す。
上記の書名で景観と訳されているギリシア語は、「必見のもの」といった意味である。つまり、本来は「怪しい」、「ありえない」といった意味は含まれていない。
しかし、英語では「Seven Wonders of the World」、日本語では「世界の七不思議」などと訳されたために、現代ではオカルトブームなどと結びついて、「当時の土木技術のレベルを超越している」、「物理的に可能とは思えない」といった意味で解釈されることがある。それがゆえに、七不思議の実像が「空中」庭園など誤解されることもある。
こういった巨大建造物の建設が、多くの場合においては国家事業として、現代では想像し難いほどに長い期間をかけてなされていた面もあり、また文明は一様に進歩している訳でもなく情報の散逸によるロストテクノロジー化といった問題を含んでいて、後世の者がその建築技術の高さに驚嘆したとしても、必ずしも超古代文明の存在の証明にはならない。
しかし、神秘主義者の中にはこれら建造物が超文明によって建設されたかのように考えるケースもあり、事実オカルト関係の書籍においても、これら「世界の七不思議」が、後世の迷信を含む説明を掲載している
一般的に挙げられる「世界の七不思議」は、以下の7つである。
古典古代における「世界の七不思議」
ギザの大ピラミッド
バビロンの空中庭園
エフェソスのアルテミス神殿
オリンピアのゼウス像
ハリカルナッソスのマウソロス霊廟
ロードス島の巨像
アレクサンドリアの大灯台
この内アレクサンドリアの大灯台は、実際にはフィロンの選んだ7つには含まれていない(フィロンが選んだのはバビロンの城壁)。
これらのほとんどは地震や破壊などで消滅してしまい、「ギザの大ピラミッド」のみが現存する唯一の建物になっている。
この他、シドンのアンティパトロス、ローマの大プリニウスなど、さまざまな学者、歴史家、詩人が七不思議を選定している。
中世の七不思議
時代の変遷とともに、ヨーロッパ人の地理的な知識が広がり、七不思議として世界中の建造物が選ばれるようになった。14世紀以降と見られるが、選者、年代ともに不明ながら、次の7つが一般的には挙げられる。
◎ローマのコロッセウム
アレクサンドリアのカタコンベ
◎万里の長城
◎ストーンヘンジ
◎ピサの斜塔
南京の陶塔
◎イスタンブールの聖ソフィア大聖堂
南京の陶塔以外は現存する。
現代の「世界の七不思議」
現代においても、さまざまな「七不思議」が選定されている。観光、遺跡保護、自然保護などを意図したものの他、オカルトブームの頃に各国マスコミが番組宣伝などにこの文句を頻用したため、地球上に世界の七不思議が三桁はあると言われている。オカルト系では、七不思議をオーパーツに類するものとして取り上げることが多い。
「新・世界の七不思議」は、世界中からの投票によって決められる現代版世界の七不思議である。2000年に冒険家のベルナルド・ウェーバー氏の個人的なイニシャティブによって提案され、前ユネスコ事務局長のフェデリコ・マヨールを中心とした実行委員会が候補地を絞り込んだ。最終結果は、2007年7月7日にポルトガルのリスボンで発表された。
尚、「新・世界の七不思議」と翻訳されているが「wonder」には「驚異的な」というニュアンスもあるため、「不思議」な物件ばかりではない。その証拠にノミネートされている物件は、歴史的にほぼ解明された物ばかりであり、不思議でも何でもない物が殆どである。
2007年6月20日と7月9日の二度にわたって、ユネスコは、「新・世界の七不思議」のキャンペーンは、ユネスコの世界遺産プログラムとは何ら関係ないと声明を発表している。
ユネスコの目的と任務は、世界遺産を保護、保存において、当該国を援助することである。
「新・世界の七不思議」の様に、センチメンタル、或は、象徴的なサイトの価値を認めそれらを新リストに登録するだけでは十分とは言えない。科学的な登録基準を定義しなければならないし、候補物件の資質を評価し、法的かつ管理上の枠組みを整備しなければならない。
また、関係当局は、これらの枠組みを証明し、当該物件の保護状況を恒久的に監視しなければならない。仕事は、技術的な保護と政治的な説得が一つである。また、世界遺産地を継承的な価値、直面する脅威から失われるのを防ぐなどの教育的な役割も明らかである。
ウエーバー氏のマスメディア・キャンペーンとユネスコの世界遺産リストへの登録による科学的・教育的な業務とは比較にはならない。
「新・世界の七不思議」のリストは、インターネットにアクセスできる人達だけの意見であり、全世界なものではなく、内輪の事業の結果になる。この事業は、この公示によって選ばれた当該物件の保護に貢献するものではない。
世界中の人気投票で選ぶ、新・世界の七不思議については、幾たびも支援要請を受けたが、ウェーバー氏には、進んで協力しないことを決めたという。21の候補地も最終的に選ばれた7つも、たまたま、ユネスコの「世界遺産リスト」に登録されているものと重なっただけである。
2006年10月に発表された21の候補地
◎アクロポリス(ギリシア)
◎アルハンブラ宮殿(スペイン)
◎アンコール・ワット(カンボジア)
◎チチェン・イッツァのピラミッド(メキシコ)
イエス・キリスト像(ブラジル)
◎コロッセオ(イタリア)
◎イースター島のモアイ(チリ)
◎エッフェル塔(フランス)
◎万里の長城(中国)
◎聖ソフィア大聖堂(トルコ)
◎清水寺(日本)
◎クレムリンと赤の広場(ロシア)
◎マチュ・ピチュ(ペルー)
ノイシュヴァンシュタイン城(ドイツ)
◎ペトラ(ヨルダン)
◎ギザのピラミッド(エジプト)
◎自由の女神像(アメリカ)
◎ストーンヘンジ(イギリス)
◎シドニー・オペラハウス(オーストラリア)
◎タージ・マハル(インド)
◎トンブクトゥ(マリ)
2007年7月7日の最終投票結果
◎チチェン・イッツァのピラミッド(メキシコ)
イエス・キリスト像(ブラジル)
◎万里の長城(中国)
◎マチュ・ピチュ(ペルー)
◎ペトラ(ヨルダン)
◎コロッセオ(イタリア)
◎タージ・マハル(インド)
◎ユネスコの「世界遺産リスト」に登録されている物件
「新・世界の七不思議」
候補の基準とルール(CRITERIA
for CANDIDACY & RULES)
期間(TIME SPAN)
新・世界の七不思議は、人類の起源から紀元後2000年までの人類史の全体をカバーするものである。
構造(STRUCTURE QUALITY)
全てのモニュメントや建造物は、人間によって建てられ保護されているものでなければならない。「人間によって建てられた」を表明するのは、人間の手がモニュメント、或は、建造物の創出に関わっていなければならない。「新・世界の七不思議」の候補の全ては、創作者のビジョンが人工的な援助なしに理解できる十分な保護状況になければならない。遺跡ではあるものの、目に見える援助で再建されたものは、ノミネートされるはずがない。
地理(GEOGRAPHIC DIMENSION)
世界の全ての大陸と国からのモニュメントと建造物は、適格で、ノミネートされるべきである。しかしながら、21か国からの21の候補だけが最終リストとして選ばれた。
芸術的・文化的価値(ARTISTIC AND CULTURAL
VALUE)
モニュメントや建造物は、芸術的、或は、建築学的な価値を持たなければならない。純粋に技術的な驚きの唯一の目的は、技術の応用や使用であり、触れることのできない自然の驚異は、人間が介入できないものであり、将来の新・世界の七不思議のプロジェクトに含められるであろう。
認知ファクター(RECOGNITION FACTOR)
ノミネートされたモニュメントと建物の多くが、普遍的に認められることを期待する。
多様性(DIVERSITY)
モニュメントや建造物は、世界の人々の文化的・社会的な多様性を反映し祝福されるべきものである。
権威(AUTHORITY)
77の応募のリストから2006年1月1日に21の最終リストをフェデリコ・マヨールを議長とする専門家のパネルで、匿名で提出した。マヨール博士は、前ユネスコ事務局長で、下記の著名な建築家からのアドバイスとパネリストの推薦からコンセンサスを確立した。
●シーザー・ペリー(Cesar Pelli)
彼の有名な作品は、マレーシアの首都クアラルンプールにある、ペトロナス・ツインタワーや、ニューヨークのワールド・フィナンシャル・センター、ニューヨーク近代美術館増築、カーネギー・ホール・タワー、香港の香港国際金融センターなどがあげられる。また日本でも、羽田空港第二ターミナルビル、愛宕グリーンヒルズ、日本橋三井タワー、NTT新宿本社ビル(現在のNTT東日本本社)、国立国際美術館などを手がけている。
●ハリー・サイドラー(Harry Seidler)
1948年にアメリカからオーストラリアに移住した建築家。オーストラリアの現代建築を代表する一人であり、バウハウスの理論を表現できる建築家。オーストラリア国内外で重要な居住建物と商業ビルディングを作り、新しいアイデアと建築技術を広め、シドニーの建築に貢献。サイドラーの建築なくしてシドニーやブリスベンを想像することは難しい。
●ザラ・ハディド(Zara Hadid)
●安藤忠雄(Tadao Ando)
●張永和(Yung Ho Chang)
●アジーズ・タヨブ(Aziz Tayob)
<参考文献>
●Wikipedia
●ユネスコ世界遺産センターのホームページ
●シンクタンクせとうち総合研究機構発行「世界遺産データ・ブック」
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