2008年の回顧と2009年の展望





 

 各 位



 2008年も大変,慌しい年になりました。当シンクタンク、そして、世界遺産総合研究所にとって,この一年の活動を回顧してみると,大変,意義深い年であったように思います。

 一つは、大型クルーズ船「パシフィック・ヴィーナス」の2008年世界一周クルーズで、アレキサンドリア、ピレウス、ミコノス島、ヴァレッタ、チビタベッキア、カンヌ、バルセロナを巡るエーゲ海、地中海クルーズの夢を実現したことです。日程の都合等で、世界一周は出来ませんでしたが、長年の夢が実現しました。

 日本クルーズ客船主催Pacific Venus2008年世界一周クルーズ「エーゲ海と地中海の世界遺産を航く」
  アレキサンドリア(エジプト)→ピレウス(ギリシャ)→ミコノス島(ギリシャ)→ヴァレッタ(マルタ共和国)→チビタベッキア(イタリア)→カンヌ(フランス)→バルセロナ(スペイン)

 また、未踏地であった南米大陸のブラジル、ペルー、アルゼンチンへの空路の旅でした。ロサンゼルス、リマ、ブエノスアイレスを経由しての6泊10日のハードな行程でしたが、世界三大瀑布の一つであるイグアスの滝、アンデス山脈のクスコやマチュピチュ、それに、セスナ機からのナスカの地上絵、日本とは明らかに異なる文明や文化の旅でした。

 もう一つは、アジアのクメール文明の旅、アンコールでした。広島−台北−ホーチミン・シティ−シェムリアプという経路です。遺跡と彫刻、夜明けや日没時の遠近から見る光景、世界無形文化遺産でもあるアプサラの舞踊、物売りの少年少女、アンコール・クッキーで事業を成功させた日本人の女性経営者、中国深?から家族旅行で来ていた日本人駐在員、そして、南ヴィエトナムの今、香しいコーヒー、さまざな出会いの旅でした。広島から中国の上海や台湾の台北へは、札幌へ行くのと同じくらいの時間距離です。韓国のソウルへは、東京に行くよりも近いのですから、これも不思議です。

 二つは,2003年のユネスコ本部(パリ)での第27回世界遺産委員会、2004年の中国・蘇州市での第28回世界遺産委員会、2005年の南アフリカ・ダーバン市での第29回世界遺産委員会、2006年のリトアニアのヴィリニュス市での第30回世界遺産委員会、2007年のニュージーランドのクライストチャーチでの第31回世界遺産委員会に続いて、カナダのケベック・シティでの第32回世界遺産委員会にオブザーバーとして出席できたことです。今回は、岩手県の「平泉−浄土思想を基調とする文化的景観−」の世界遺産登録が注目されましたが、世界に通用する「顕著な普遍的価値」の証明の難しさを痛感しました。

 また,レセプションや会議の合間に各国の関係者と知り合いになれたのも大きな収穫でした。これまでの世界遺産委員会で会った人、それに、他の国際会議で会った人、ユネスコ本部、IUCN、ICOMOSを訪問した時に会った人、メールでコミュニケーションのあった人、日本の文化庁や環境省などの世界遺産担当者、それに、NHK、朝日新聞社、読売新聞社、毎日新聞社、岩手日報などマスコミ関係の人など多彩でした。

 三つは、新聞社、テレビ局、ラジオ局などマスコミ関係からの取材が大変多くなったことです。これまでは、電話やメールによる取材がほとんどでしたが、フェース・ツー・フェースの取材が増えてきました。フォーカル・ポイント、或は、リソース・パースンとして、今後も正確な情報把握に努めていかなければならないと考えています。

 【テレビ出演】

   読売テレビ「ニューススクランブル」(2008年9月25日)

 【ラジオ出演】

   NHKラジオ第一「土曜ジャーナル」 
   世界遺産登録で富士山は変わるのか〜富士山の将来像を探る〜(2008年2月23日放送)

 【新聞記事】

   読売新聞山梨・静岡版「世界遺産への道」【5】登録活動の゛産物゛(2008年2月6日)
   西日本新聞「世界遺産めざして 『登録へ市民の努力を』」(2008年2月18日)
   長崎新聞「教会群登録へシンポで意見 周辺の面的管理重要・観光客マナー向上を」
    (2008年2月18日)
   北海道新聞「知床世界遺産 IUCN調査終了 厳しい指摘で「激励」」(2008年2月23日)
   朝日新聞岩手版「平泉 浄土思想はユネスコ憲章そのもの」(2008年3月4日)
   読売新聞中部版「世界遺産の熊野古道・八鬼山」(2008年4月26日)
   読売新聞岩手版「イコモス勧告ずれ込みも 平泉の文化遺産」(2008年5月20日)
   読売新聞岩手版「「正念場これから」世界遺産委員会まで残り5週間」(2008年5月24日)
   朝日新聞岩手版「「逆転登録」なお全力 平泉」(2008年5月24日)
   岩手日報「平泉の試練 イコモス「登録延期」B文化的価値 試される発信能力」(2008年5月26日)
   朝日新聞岩手版「<平泉の願い>世界遺産委まで3週間余り 」(2008年6月6日)
   朝日新聞岩手版「世界遺産総合研究所・古田陽久所長に聞く」(2008年6月6日)
   東京新聞「上野の国立西洋美術館 『街おこし』へなるか世界遺産」(2008年6月20日)
   朝日新聞岩手版「平泉 世界遺産見送り 審議内容「再現」(2008年7月8日)
   読売新聞岩手版「世界遺産へ平泉再審査 戦略見直し必至」(2008年7月9日)
   岩手日報「大変だが希望ある」(2008年7月9日)
   毎日新聞「世界遺産狂想曲:平泉にみる課題/4 問われる条約の理念」(2008年7月11日)
   朝日新聞岩手版 構成資産めぐり難題(2008年7月10日)
   毎日新聞「世界遺産狂想曲:平泉にみる課題/番外編 推薦書の説得力不足」(2008年7月12日)
   読売新聞「宮島 原始林に赤ペンキ」(2008年7月13日)
   日加タイムス(2008年8月1日)
   北海道新聞札幌圏版「北海道・北東北の縄文遺跡群 世界遺産「価値」示せるか」(2008年10月2日)
   毎日新聞福岡都市圏版つくし青年会議所 研修会:「世界遺産登録への道」 (2008年10月4日)
   埼玉新聞 「他候補と統合で可能性も埼玉古墳群・世界遺産への道」(2008年10月16日)
   西日本新聞「文化遺産でまちづくりを つくしJCが「筑紫ルネッサンス」 
          史跡見学や講演会に150人」(2008年10月27日)
   山梨日日新聞「環境保全の誓い新たに 富士山憲章10周年で記念フォーラム」(2008年11月19日)
   中日新聞「貴重な富士山を未来に継承 憲章制定10周年フォーラム」(2008年11月19日)

 四つは,全国で活発になっている「世界遺産登録運動」の勉強会や研究会への出講です。萌芽段階のもの、暫定リスト入りをめざし具体化しつつあるものなど、熱意、熟度、合意の度合いはまちまちです。世界遺産登録をめざし地域のソフト面、或は、ハード面の環境整備を行っていくことは、すなわち、真の地域づくり、美しいまちづくりに通じるものであることを自ら再認識している次第です。今後は、縄文遺跡、古墳などの考古学遺跡、産業遺産、土木遺産、20世紀の都市・建築分野、文化的景観、瀬戸内海地域、「海のシルクロード」などの交易・文化の道、トランス・バウンダリー・ノミネーションなど研究領域を広げてまいります。

 ●埼玉県 行田商工会議所主催新春講演会「世界遺産とまちづくり」
 ●長崎県教育委員会、五島市教育委員会主催「長崎の教会群とキリスト教関連遺産に関するシンポジウム」
 ●和歌山県 社団法人伊都青年会議所主催 世界遺産の゛今゛
 ●福岡県  (社)つくし青年会議所主催筑紫ルネッサンス第四章〜世界遺産登録への道〜
  「世界遺産基準のまちづくり」
 ●山梨県 富士山憲章制定10周年記念共同事業実行委員会
  (山梨県観光部観光資源課、静岡県県民部環境局自然保護室)主催
  富士山憲章制定10周年記念フォーラム
  「 富士山の恵みを永久に引き継ぐ〜過去、現在そして世界遺産へ〜」

 五つは,生涯学習センター、公民館など公共施設、新聞社系の文化センターや懇話会、大学、国際機関、シンクタンク、行政、商工会議所、青年会議所(JC)主催の「世界遺産講座」、勉強会、研究会等への出講です。2007年は、「海外の世界遺産」と「日本の世界遺産」に力点を置き、単発の1回ものから、自然遺産と文化遺産の両方を網羅する5回シリーズ、8回シリーズとプログラムの内容を多角化しました。2007年には、当方が「世界遺産講座」を開設後、通算100プログラムを達成、参加人数は、プログラム毎に多少はありますが、通算5000人〜10000人にもなるでしょうか。何事も一つ一つの積み重ねですから、私は、決して手抜きはしません。2008年もこうした努力を積み重ねました。自らの経験を通じて、社会教育分野、学校教育分野、職業教育分野を通じた「世界遺産教育」のあるべき姿を確立していきたいと考えています。

 ●神奈川県 愛川町教育委員会主催愛川町町民大学「日本の世界遺産」
 ●岐阜県 各務原市主催各務原市生涯学習フォーラム2008
  「美しい都市・未来への継承゛にっぽんの世界遺産゛」
 ●大阪府 高槻市立北清水公民館主催「日本の世界遺産の゛今」
 ●大阪府 和泉シティプラザ生涯学習センター主催平成20年度前期 和泉シティプラザ市民カレッジ
  「世界遺産を旅する」
 ●和歌山県 社団法人伊都青年会議所主催 世界遺産の゛今゛
 ●神奈川県 (財)横須賀市生涯学習財団主催平成20年度(2008年度)第32回横須賀市民大学
 「世界遺産を学ぶ−アジアとアラブ諸国編−」
 ●兵庫県 チャーミング・スクウェア舞子主催世界遺産セミナー「世界遺産の旅」
 ●兵庫県 神戸大学国際文化学部異文化コミュニケーション講座主催世界遺産セミナー
  「世界遺産の現状と課題」
 ●大阪府 高槻市立北清水公民館主催 現代的課題事業 世界遺産講座アジアの世界遺産
  「日本の世界遺産のこれから」、「中国の世界遺産の今とこれから」

 六つは,2006年は「海外の世界遺産」に力点を置き、文化の多様性とテーマ性を重視しました。2007年は「日本の世界自然遺産」に力点を置き、大型クルーズ船「パシフィック・ヴィーナス」での船上セミナー、そして、知床、白神山地、屋久島に海からアプローチするというものでした。2008年は、日本航空、JTB、Yahooトラベルなど運輸・観光・旅行・情報系の会社など多様なコラボレーションが実現しました。

  ●JAL(日本航空) JMBツアーニュース
  コラム「大自然と世界遺産に魅了される国 オーストラリア」 (2008年12月15日号)
  http://www.jal.co.jp/tours/pr/tournews.html
  ●日本クルーズ客船主催Pacific Venus2008年世界一周クルーズ「エーゲ海と地中海の世界遺産を航く」
  アレキサンドリア(エジプト)→ピレウス(ギリシャ)→ミコノス島(ギリシャ)→
  ヴァレッタ(マルタ共和国)→チビタベッキア(イタリア)→カンヌ(フランス)→
  バルセロナ(スペイン)
  ●広島県 ひろでん中国新聞旅行主催文化講座「世界遺産の旅」
  ●世界遺産ガイド−Yahooトラベル

 以上が、2008年の当シンクタンク、そして、世界遺産総合研究所の主なトピックスです。

 私たちの仕事は,グローバルな視点に立っての地道な努力と長い時間を要するものです。しかしながら,「継続は力」で,社会に役立つことも多くなってきました。また、社会的な認知度も次第に高くなり、2008年に引き続き、自由国民社発行の「現代用語の基礎知識2009」にも執筆の機会を与えて頂きました。テレビや新聞などのマスコミを通じて、世論に大きな影響を与えることもあるので、言行には気をつけたいと、改めて気を引き締めているところです。

 2009年は,果たしてどんな年になるのでしょうか。戦争のない平和な地球社会にしていかなければならないのは自明の理です。

 2009年も時間の許す限り、時流を読みつつ、世の中に役立つシンクタンクの舵取りを世界遺産総合研究所を中心に展開していきたいと考えています。長期的には30年,中期的には10年を視野におき,これまでに蓄積してきた知識と経験の集大成と利活用、応用発展がテーマになります。

 国内の世界遺産地14か所は、仕事柄、すべて行ったことがありますが、暫定リスト記載物件、また、これから世界遺産登録をめざす地にも、積極的に出向きたいと考えています。日本の47都道府県の県庁所在地は、すべて、これまでに訪問を達成し、また、海路による日本一周の夢は、2007年に実現しました。

 今年は、講演による全国行脚で、これまで実績のない、青森県、秋田県、岩手県、宮城県、福島県、群馬県、長野県、富山県、滋賀県、三重県、福井県、山口県、香川県、大分県、佐賀県、鹿児島県、沖縄県に行ける機会を模索してみたいと思います。

 遠方になればなるほど、交通費がネックになりますが、それを乗り越える価値の高いお話が出来る様に、努力と精進を重ねていきたいと考えています。

 海外については、南極を除いては、七大陸は、既に、制覇しました。南極については、ニュージーランドのクライスト・チャーチにある「国際南極センター」で、南極体験をしましたが、余り行きたいとは思いません。主要な世界遺産地も、紛争地域を除いては、ほぼ訪問しましたが、自然遺産、文化遺産、複合遺産の偏りがない様、意識的に、空白地の隙間を埋めていきたいと思いますが、なかなか、長期間の時間がとれません。

 世界、日本と平面的な思考から、地球と人類といった立体的な思考にパラダイムを転換していこうと考えています。また、「日本の世界遺産」を通じて、日本の自然や文化の特質、素晴らしさを外国語、なかでも英語で伝えられるバイリンガルの訓練も意識的に積まなければならないと考えています。今年も海外の大学との関係で大きな転機が訪れそうです。

 引き続きご支援をお願い致します。

                                        2008年12月30日


                                          古田 陽久



 



















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