世界遺産ガイド-イスラエルとパレスチナ編- |
本書の注文について |
||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||
全国学校図書館協議会 | ||||||||||||||||||||||
選定図書 |
【本書の特色】 イスラエルとパレスチナの世界遺産などを特集 |
イスラエルには、世界遺産が9件、世界の記憶が5件、パレスチナには世界遺産が4件、世界無形文化遺産が6件、それにヨルダンの推薦によって登録されたエルサレム、これらが戦争によって破壊されたり焼失してはならない。また、伝統芸能や伝統工芸技術などの無形文化も途絶えてはならない。本書ではこれら有形・無形の遺産を特集することによって緊急的な保護措置を国際的な協力のもとに講じる必要がある。 |
論 稿 |
本書では、イスラエルとパレスチナの世界遺産を特集する。断片的にではありますが、これまでに、「世界遺産ガイド-中東編-」、「世界遺産ガイド-イスラム諸国編-」で取り上げたことがあります。 イスラエルとパレスチナとの関係は、長年にわたって複雑で緊張が高まっています。1947年に国連でパレスチナにユダヤ人の国とアラブ人の国とに分割する提案がなされ、ユダヤ人の国としてイスラエルが創設されました。しかし、アラブ側は強硬に反対し中東戦争が勃発し、それは1973年の第四次まで続きました。その後、エジプトやヨルダンと平和条約を結びましたが、中東戦争で獲得したゴラン高原の占領を続けています。現在、イスラエルとパレスチナの和平交渉は2014年を最後に行われていません。 イスラエルの民族は、ユダヤ人(約74%)、アラブ人(約21%)、その他(約5%)、言語は、ヘブライ語(公用語)、アラビア語(特別な地位を有する)、宗教は、ユダヤ教(約74%)、イスラム教(約18%)、キリスト教(約2%)、ドルーズ(約1.6%)です。 イスラエルは、1999年10月6日に世界では157番目に世界遺産条約を締約、2024年1月現在、イスラエルの世界遺産の数は9件です。イスラエル最初の世界遺産は、2001年に 「マサダ」、2003年に「テル・アヴィヴのホワイト・シティ-近代運動」、2005年に「聖書ゆかりの遺跡の丘-メギド、ハツォ−ル、ベール・シェバ」と「香料の道 - ネゲヴの砂漠都市群」、2008年に「ハイファと西ガリラヤのバハイ教の聖地」、2012年に「カルメル山の人類進化の遺跡群:ナハル・メアロット洞窟とワディ・エル・ムガラ洞窟群」、2014年に「ユダヤ低地にあるマレシャとベトグヴリンの洞窟群:洞窟の大地の小宇宙」、2015年に「ベイト・シェアリムのネクロポリス、ユダヤ人の再興を示す象徴」、すべて文化遺産です。 世界無形文化遺産については、ありません。無形文化遺産保護条約の締約が望まれます。 世界の記憶については、5件、2013年選定の「エルサレムのヤド・ヴァシェムの証言集、1954〜2004年」と「ロスチャイルド文書」、2015年の「アレッポ写本」と「アイザック・ニュートン卿*の科学と数学の論文集 ←アイザック・ニュートンの神学の論文集」(2017年、英国を追加)、2017年の「イスラエルの民話アーカイヴス」です。 一方、パレスチナの人種・民族は、アラブ人、言語は、アラビア語、宗教は、イスラム教(92%)、キリスト教(7%)などです。 パレスチナは、2011年12月8日に世界では189番目に世界遺産条約を締約、2024年1月現在、パレスチナの世界遺産の数は4件です。パレスチナ最初の世界遺産は、2012年に登録された 「イエスの生誕地:ベツレヘムの聖誕教会と巡礼の道」、2014年の「オリーブとワインの地パレスチナ-エルサレム 南部バティール村の文化的景観」(★危機遺産に同時登録)、2017年の「ヘブロン/アル・ハリールの旧市街」(★危機遺産に同時登録)、2023年の「古代エリコ / テル・エッ・スルタン」とすべて文化遺産です。 世界無形文化遺産については、2011年に無形文化遺産保護条約を締約、世界無形文化遺産は6件です。パレスチナの無形文化遺産は、2008年の「パレスチナのヒカイェ」、2019年の「ナツメヤシの知識、技術、伝統及び慣習」、2021年の「パレスチナの刺繍芸術とその慣習・技術・ 知識及び儀式」と「アラビア書道:知識、技術及び慣習」、2023年の「金属(金、銀、銅)に彫刻を施す芸術、技術、および実践」と「パレスチナの伝統舞踊、ダブケ」です。 世界の記憶については、選定されているものはありません。 尚、ヨルダン川に近い要害の地に造られた城郭都市のエルサレム、世界三大宗教であるユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地として有名で、アラビア語の「アル・クドゥス」(聖なる都市)の名で知られています。 「エルサレムの旧市街とその城壁」は、1981年にヨルダンの推薦によって、「世界遺産リスト」に登録されますが、どこの国にも属さず単独で扱われています。また、民族紛争、無秩序な都市開発、観光圧力、維持管理不足などによる破壊の危険から1982年に「危機にさらされている世界遺産リスト」(通称★危機遺産リスト)に登録されています。 2023年10月7日、イスラム組織ハマス等のパレスチナ武装勢力が、パレスチナ自治区ガザ地区からイスラエルに数千発のロケット弾を発射。更に、1500名規模がイスラエル側検問・境界を破って、イスラエル軍 (IDF)兵士の他、外国人を含む市民を殺害・誘拐。これらを受けて、イスラエル国防軍がガザ地区において軍事作戦を実施して戦争になり被害が拡大しています。 一刻も和平が望まれますが、民族も宗教も異なるイスラエルとパレスチナは、今後、どうあるべきなのかが問われています。アメリカのバイデン大統領が提案している様に、イスラエル国(首都西エルサレム)とパレスチナ国(首都東エルサレム)の2国家共存が望ましいと思います。 イスラエルは、2017年にユネスコを脱退したが復帰させ、パレスチナの国連加盟(現在はオブザーバー)も独立国家として正式に認めるべきです。 世界遺産の「エルサレムの旧市街とその城壁」もイスラエルとパレスチナの複数国が管理する世界遺産とすれば、危機遺産リストからも解除できると思うのです。 今回、「世界遺産ガイド-イスラエルとパレスチナ編-」を発刊する動機になったのは、昨年、出版した「世界遺産ガイド-ウクライナ編-」と同様に、戦争によって、かけがえのない世界遺産、世界無形文化遺産、それに、世界の記憶などが破壊されたり焼失することを、大変危惧しており緊急保護が必要です。 2024年2月 世界遺産総合研究所 古田陽久 |
世界遺産シリーズに戻る 世界遺産と総合学習の杜に戻る シンクタンクせとうち総合研究機構のご案内に戻る 世界遺産総合研究所のご案内に戻る 世界遺産情報館に戻る 出版物のご案内に戻る 出版物ご購入のご案内に戻る |