世界遺産ガイド  ーウクライナ編ー






世界遺産ガイド−ウクライナ編−  
著者 古田陽久
企画・編集 世界遺産総合研究所
発行 シンクタンクせとうち総合研究機構
定価 本体 2600円(定価2750円)
ISBN SBN978-4-86200-260-0 1526 Y2600E
発行 2022331
判型 A5
頁数 128ページ

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【本書の特色】危機的な状況にあるウクライナの「ユネスコ遺産」を特集

ロシア連邦の軍事侵攻によって、ウクライナは危機的な状況にある。長年、ユネスコ遺産を研究してきた観点からウクライナの「世界遺産」「世界無形文化遺産」「世界の記憶」を把握し、人類の英知を結集して、ウクライナへのあらゆる「脅威」や「危険」から貴重な自然遺産や文化遺産を守りたい。


【概説】

 本書では、ウクライナの「世界遺産」はじめとする「ユネスコ遺産」を特集する。ロシア連邦の軍事侵攻によって、ウクライナの国は、危機的な状況に瀕している。長年、ユネスコ遺産(「世界遺産」「世界無形文化遺産」「世界の記憶」)を研究してきた観点から、ウクライナにある世界的な「顕著な普遍的価値」を有する「世界遺産」、グローバル化によって失われつつある「世界無形文化遺産」、われわれ人類にとって忘れてはならない「世界の記憶」にはどの様なものがあるのかを把握し、「人命」と同様に、ありゆる「脅威」や「危険」からこれらを守っていかなければならない。 

 ウクライナは、東はロシア、西はポーランド、スロバキア、ハンガリー、南はルーマニア、モルドバ、北はベラルーシと国境を接し、アゾフ海、黒海に沿った海岸線を持っている東ヨーロッパにある国である。   

 ウクライナの国土のほとんどは、肥沃な平原、ステップ(草原)、高原で占められている。ドニエプル川、ドネツ川、ドニエステル川が横切っており、南のブーフ川とともに、黒海、アゾフ海に注ぎ込んでいる。黒海北岸にはクリミア半島が突き出しており、ペレコープ地峡でウクライナ本土とつながっている。南西部にあるドナウ・デルタはルーマニアとの国境になっている。

 山岳地帯は、ウクライナの最南端のクリミア山脈と西部のカルパティア山脈だけである。最高峰はカルパト山脈にあるホヴェールラ山で、標高2,061メートル。これ以外の地域も平坦というわけではなく、東ヨーロッパの中では比較的起伏の多い地形をしている。 

 ウクライナは多民族国家である。主要民族はウクライナ人で、全人口の約8割を占める。ロシア人は約2割を占める。ほかに少数民族としてクリミア・タタール人、モルドヴァ人、ブルガリア人、ハンガリー人、ルーマニア人、ユダヤ人がいる。高麗人も約1万人ほどいる。

 ウクライナは、1988年10月12日に世界では104番目に世界遺産条約を締約、2022年3月現在、ウクライナの世界遺産の数は7件です。ウクライナ最初の世界遺産は、1990年に登録された「キエフの聖ソフィア大聖堂と修道院群、キエフ・ペチェルスカヤ大修道院」(文化遺産(登録基準(i)(ii)(iii)(iv))、その後、1998年に「リヴィフの歴史地区」(文化遺産(登録基準(ii)(v))) 、2005年に「シュトルーヴェの測地弧」(文化遺産(登録基準(ii)(iv)(vi)))、2007年に「カルパチア山脈とヨーロッパの他の地域の原生ブナ林群」(自然遺産(登録基準(ix)))、2011年に「ブコヴィナ・ダルマチア府主教の邸宅」(文化遺産(登録基準(ii)(iii)(iv)))、2013年には「ポーランドとウクライナのカルパチア地方の木造教会群」(文化遺産(登録基準(iii)(iv))と「タウリカ・ケルソネソスの古代都市とそのホラ 」(文化遺産(登録基準(ii)(v))の2件が登録された。

 また、世界遺産暫定リストには、「考古学遺跡「石の墓」」、「ウクライナの天文台群」、 「クリミアハンのバフチサライ宮殿」、「6〜16世紀のスダク要塞」、「クリミア・ゴートの「洞窟の町」の文化的景観」、「カームヤネツィ・ポジーリシクィイの渓谷の文化的景観 」、「国立デンドロロジー公園「ソフィイイフカ」」、「デルズプロム (州産業ビル) 」、「港町オデッサの歴史地区」、 「9〜13世紀のチェルニヒウの歴史地区」、「キエフ: 聖ソフィア大聖堂と関連する修道院群、聖キリル教会と聖アンドリュー教会、キエフ・ペチェールシク大修道院(キエフの聖ソフィア大聖堂と修道院群、キエフ・ペチェルスカヤ大修道院の登録範囲の拡大)」、「ニコラエフ天文台」、「国立ステップ生物圏保護区「アスカニア・ノヴァ」 」、「タラス・シェフチェンコの墓と歴史・自然ミュージアム保護区」、「バフチサライのクリミア・ハン国の首都の歴史的建造物群」、「地中海から黒海へのジェノバ交易道上の交易所群と要塞群」、「黒海からバルト海への道上のチーラ - ビルホロド (アッカーマン)」の17件が記載されている。

 ウクライナの自然遺産関係は、エコロジー・天然資源省省、文化遺産関係は、文化省が管理している。

 世界無形文化遺産については、2008年5月に世界では96番目に無形文化遺産保護条約を締約、世界無形文化遺産の数は4件である。

 「代表リスト」には「ウクライナ装飾民俗芸術の事象としてのペトリキフカの装飾絵画」(2013年)、「コシウの彩色陶器の伝統」(2019年)、「オルネック、クリミア・タタール人の装飾と関連知識」(2021年)の3件が登録されている。
 
 「緊急保護リスト」には「ドニプロペトロウシク州のコサックの歌」(2016年)の1件が登録されている。

 世界の記憶については、「ユダヤ民族の民俗音楽集(1912?1947年)」(2005年)、「ラズヴィウ年代記とネスヴィジ図書館のコレクション」(2009年)、「ルブリン合同法の記録」(2017年)、「チェルノブイリ原子力発電所事故に関連する記録遺産」(2017年)の4件が登録されている。

 ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は、2022年3月3日に「国連総会決議採択に伴うユネスコ声明」を発表。このなかでオドレー・アズレー事務局長は、「この暴力の激化──子供を含む市民の死者をもたらしている──はまったく容認できない」としつつ、ウクライナの文化財に対する攻撃を非難。1954年の「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約」(ハーグ条約)とその2つの議定書(1954年、1999年)を尊重するよう求めている。

 このままでは、ウクライナの世界遺産は、アフガニスタン、イラク、シリアの様に、その多くを「危機にさらされている世界遺産」(危機遺産)に登録せざるを得ない。

 皮肉にも。現在の世界遺産委員会の議長国はロシア連邦。議長はユネスコ全権大使のアレクサンダー・クズネツォフ氏(H.E.Mr Alexander Kuznetsov) 氏が務めている。また、今年の第45回世界遺産委員会は、6月19日〜30日に、ロシア連邦のカザン市で開催されることになっているが、今のままでは。予定通り開催されるとは思えない。

 人類の英知を結集し、ウクライナの貴重な自然遺産や文化遺産を守りたい。



                                        2022年3月 古田陽久























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