世界遺産と国際機関










 「世界遺産とは何か?」、「世界遺産はどのようにして決められるのか?」等のご質問が数多く寄せられます。世界遺産は、1972年11月16日のパリで開催された第17回ユネスコ総会において採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(通称:世界遺産条約)に準拠し、世界遺産条約締約国から選ばれた21か国の締約国からなる世界遺産委員会で、世界遺産リストへの登録の可否を審議して決められます。

 世界遺産条約は、政府間条約ですから、各締約国が登録推薦を行い、ユネスコの世界遺産センターに登録推薦書類を提出します。ユネスコの世界遺産センターは、各締約国から提出された書類に不備がないかをチェックし、不備がないものについては、自然遺産と文化遺産の文化的景観に係わるものについては、IUCNに、文化遺産関係については、ICOMOSに、世界遺産リストに登録するのにふさわしい物件かどうかの専門的な評価を依頼します。

 IUCNやICOMOSは、各物件の真正性や完全性、登録基準の適合性、恒久的な保護管理措置などの登録要件を満たしているかどうかを調べる為に現地調査を行い、その結果を評価レポートにまとめて、世界遺産委員会ビューロー会議を通じて、世界遺産委員会に世界遺産リストへの登録の可否や条件などを勧奨します。

 本稿では、世界遺産と国際機関と題し、世界遺産と係わりの深い国際機関の活動やその役割について学びたいと思います。最近の大学や大学院生の就職希望先として、「世界遺産に関係した仕事がしたい」という相談が、当方にも、数多く寄せられます。

 国際公務員としてのUNESCO職員、IUCN、ICOMOS、ICCROMなど国際NGOの職員になりたいという学生も数多く、実際に、
これらの機関を訪問する機会を設ける橋渡しが出来ればと考えています。


 
                                                               古田 陽久






 国際機関名と概要

 UNESCO
(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization)

ユネスコは、国連教育・科学・文化機関の略称。人類の知的、倫理的連帯感の上に築かれた恒久平和を実現するために1946年に創設された。その活動領域は、教育、自然科学、人文・社会科学、文化、それに、コミュニケーション・情報。ユネスコ加盟国は、現在190か国。ユネスコ本部は、フランスのパリにあり、世界各地に地域事務所などがある。通常予算 610百万米ドル(約744億円 2004-2005年)、職員総数 約1950人。わが国は、1951年に7月に加盟して以来、日本ユネスコ国内委員会(文部科学省内)を中心として、ユネスコの事業に幅広く積極的に参加・協力している。現在のユネスコ事務局長は、日本人としては初めての松浦晃一郎氏(前駐仏大使)が務めている。


 ICOMOS
(International Council of Monuments and Sites)

ICOMOSとは、国際記念物遺跡会議の略称で、人類の遺跡や建造物などの歴史的資産の保存・修復を目的として、1964年のヴェニスでの記念物遺跡保存・修復憲章(Charter for the Conservation and Restoration of Monuments and Sites)の採択を受けて1965年に設立されたパリに本部がある国際的なNGO。大学、研究所、行政機関、コンサルタント会社に籍を置く110か国、約7000人の建築、都市計画、考古学、歴史、芸術、行政、技術などの専門家のワールド・ワイドなネットワークを通じて、文化遺産に推薦された物件の専門的評価や既に世界遺産に登録されている物件の保全状況等を世界遺産委員会に報告している。


 IUCN
(International Union for Conservation of Nature and Natural Resources)
IUCNとは、国際自然保護連合の略称で、自然、特に、生物学的多様性の保全や絶滅の危機に瀕した生物や生態系の調査, 環境保全の勧告など自然環境の保全を目的とする国際的なNGO(非政府組織)で、絶滅のおそれのある動植物の分布や生息状況を初めて紹介した「レッド・データ・ブック」で有名。自然保護や野生生物保護の専門家のワールド・ワイドなネットワークを通じて、自然遺産に推薦された物件の技術的評価や既に登録されている世界遺産の保全状況を調査し世界遺産委員会に報告している。1948年にユネスコやフランス政府、スイス自然保護連盟などの呼びかけで、各国政府、民間の自然保護団体が参加して発足。現在、77か国、114政府機関、800の民間団体、それに180か国を越える10,000人を越える科学者や専門家などがユニークなグローバル・パートナーシップを構成しており、本部はスイスのグランにある。事務局長はアキム・シュタイナー(前世界ダム委員会事務総長)。わが国の場合、外務省、環境省、恣本自然保護協会、恣本環境協会、怺C中公園センター、経団連、恪送ァ公園協会、熱帯林行動ネットワーク、雁を保護する会、沖縄大学地域研究所、恷ゥ然環境研究センター、恊「界自然保護基金日本委員会、恣本野鳥の会などが加盟している。


 ICCROM
(International Centre for the Study of the Preservation and Restoration of Cultural Property)
ICCROMとは、文化財の保存および修復の研究のための文化財保存修復研究国際センター。ユネスコの世界遺産リストに登録された地域の有形文化財をはじめ無形文化財を含むあらゆる文化遺産の保存に関する専門的なアドバイス、修復作業の水準向上の為の調査研究、研修、技術者の養成、関係機関や専門家との協力、各種ワークショップの組成、メディアでのキャンペーンなどを担う加盟国104か国、世界の先導的な保存機関からの103の準会員からなる国際組織。1956年のニュー・デリーでの第9回ユネスコ総会では、文化遺産の保護と保存についての関心が高まり、国際的な機関を創立することが決められ、1959年にローマに設立された。通称、ローマセンターと呼ばれている。わが国は、1967年にICCROMに加盟している。









参考文献
世界遺産キーワード事典
世界遺産データ・ブック−2005年版−
世界遺産ガイド−特集 第28回世界遺産委員会蘇州会議−
















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