「日本の新幹線」の世界遺産登録可能性を探る |
新幹線(The Shinkansen)は、日本の主要都市を結ぶ標準軌間のJR超高速鉄道。東海道新幹線は、1964年10月に、東京オリンピックの開催に合わせて、最高時速200kmを常時維持し、東京駅と新大阪駅を約3時間で結ぶ世界最高速の鉄道として華々しく開業した。 その後、1966年11月に山陽新幹線の建設に着手し、1972年3月に新大阪駅と岡山駅間を開業、1975年3月には、博多駅まで開通。当初6時間40分かかった東京駅と博多駅間は、1986年秋のダイヤ改正で、時速220kmの運転を実現して5時間59分を記録、遂に6時間の壁を破った。 1982年6月には、東北新幹線、11月には、上越新幹線が大宮駅発で暫定開業し、1985年3月には、両新幹線が上野駅に接続し、その後、東京駅と上野駅との間がつながった。 また、1992年3月からは、時速270kmで、低騒音の「のぞみ」が登場し、東京駅と新大阪間駅が2時間30分、1997年3月には、500系のぞみが新大阪・博多間で営業運転を開始し、最高時速300Km、東京駅と博多駅間が4時間49分となった。 新幹線の開発、そして、誕生までの関係者の努力は、並大抵のものではなかっただろうし、その高速性、安全性、定時性、そして、大量輸送能力は、「顕著な普遍的価値」(Outstanding Universal Value)を有するものであり、わが国が世界に誇れる産業・技術遺産の代表格ともいえる。鉄道遺産(Industrial Heritage of Railways)については、センメリング鉄道(オーストリア)、ダージリン・ヒマラヤ鉄道(インド)が、既に、ユネスコの世界遺産リストに登録されているが、わが国の新幹線については、どうであろうか?検証を試みたい。 |
日本の鉄道と新幹線の開発の歴史(略史) | |
1872年10月14 日 | 新橋(現汐留)・横浜(現桜木町)両停車場で開業式 |
1872年10月15日 | 開業 |
1874年 5月11日 | 大阪・神戸間開業 |
1877年2月 6日 | 京都・大阪間開業 |
1880年 6月28日 | 逢坂山トンネル工事完成 |
1880年 11月28日 | 開拓史所管幌内鉄道手宮・札幌間開業 (北海道最初の鉄道) |
1882年 6月25日 | 東京馬車鉄道新橋・日本橋間開業 |
1888年 10月28日 | 伊予鉄道松山外側・三津間開業 (四国最初の鉄道) |
1889 年7月 1日 | 東海道線新橋・神戸間全通 |
1889年 12月11日 | 九州鉄道博多・千歳川間開業 (九州最初の鉄道) |
1891年 7月 1日 | 九州鉄道門司港・熊本間(現鹿児島本線)全通 |
1891年 9月 1日 | 日本鉄道上野・青森間(現東北本線)全通 |
1893年 6月 1日 | 鉄道庁神戸工場にて蒸気機関車完成 (初の国産蒸気機関車) |
1895年 2月 1日 | 京都電気鉄道開業 (電気鉄道運転の始め) |
1897 年11月 5日 | 官設鉄道、主要駅で入場切符発売開始 (入場券の始め) |
東京ー大阪間 15時間35分 | |
1899 年5月25日 | 山陽鉄道、急行列車に食堂付1等車を連結 (列車食堂の始め) |
1900年4月 8日 | 山陽鉄道、急行列車に寝台付1等食堂合造車を連結 (寝台車の始め) |
1901年 5月27日 | 山陽鉄道、神戸・馬関(現下関)間(現山陽本線)全通 |
1906 年3月31日 | 鉄道国有法公布 |
1912 年5月11日 | 信越線横川・軽井沢間において、電気機関車EC40使用開始 (電気機関車営業運転の始め) |
東京ー大阪間 11時間54分 | |
1914 年12月20日 | 東京駅開業 |
1917年 5月23日 | 鉄道院、横浜鉄道(現横浜線)において、広軌改軌試験を実施 |
1919 年2月24日 | 広軌改軌計画中止を表明 |
1922年 10月13日 | 10月14日を鉄道記念日と定める |
1925年 11月 1日 | 神田・上野間開通により、山手線環状運転開始 |
1927 年12月30日 | 東京地下鉄道、浅草・上野間開業 (地下鉄の始め) |
1929 年8月 1日 | 国鉄最初のディーゼル機関車(電気式)DC11型試運転開始 (ドイツより輸入) |
1930年 10月 1日 | 東海道本線、東京・神戸間に各等特別急行列車「燕」号の運転開始 |
東京ー大阪間 9時間(丹那トンネル開通後8時間 | |
1934年 | 東海道線丹那トンネル開通 |
1942年 6月11日 | 関門トンネル工事完成 |
1949年 6月 1日 | 日本国有鉄道設置 |
1949年 9月15日 1950年 1月 1日 |
東京・大阪間に特急「へいわ」号運転開始 「へいわ」号を「つばめ」号と改称 |
1954年 1月 6日 | 青函トンネル工事着工 |
1956年 11月19 日 | 東海道本線全線電化完成 |
東京ー大阪間 7時間30分 | |
1957年 5月25日 | 鉄道技術研究所、東京・大阪間3時間の超特急列車構想を発表 |
1958年 11月1日 | 東京・大阪・神戸間に特別急行列車「こだま」号の運転を開始 |
東京ー大阪間 6時間30分 | |
1959年 9月4月 | 新丹那トンネル起工 |
1964年 9月24日 | 東海道新幹線 東京・新大阪間開業 (総工費3800億円) |
東京ー大阪間 4時間 | |
1964年10月10日 | 東京オリンピック 開会式 |
東京ー大阪間 3時間10分 | |
1966年 4月20日 | 国鉄全線にATS装置を設置完了、全列車ATS運転となる |
1972年 3月15日 | 山陽新幹線 新大阪・岡山間開業 |
1972年 10月14 日 | 鉄道開業100周年記念式典を挙行 |
1975年 3月10日 | 山陽新幹線 岡山・博多間開業 |
東京ー博多間 6時間40分 | |
1982年 6月23 日 | 東北新幹線 大宮・盛岡間開業 |
1982年 11月15日 | 上越新幹線 大宮・新潟間開業 |
1985年 3月14日 | 東北・上越新幹線 上野・大宮間開業 |
東京ー博多間 5時間59分 | |
1986年 12月10 日 | 財団法人鉄道総合技術研究所設立を運輸大臣が許可 |
1987年 4月 1日 | 日本国有鉄道の分割民営化実施、6旅客鉄道株式会社(北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州)発足 |
1988年 3月13 日 | 津軽海峡線(青函トンネル)開業 |
1988年 4月10 日 | 本四備讃線(瀬戸大橋)開業 |
1991年 | 東北・上越新幹線 東京駅乗り入れ |
1992年 3月14日 | 東海道新幹線 「のぞみ」営業運転開始 |
東京ー大阪間 2時間30分 | |
1992年 7月 1日 | 山形新幹線 福島・山形間開業 |
1994年 | 東北新幹線 総2階建て車両マックス登場 |
1997年3月 | 500系のぞみ 新大阪・博多間で営業運転開始 最高時速300Km |
1997年 3月22日 | 秋田新幹線 盛岡・秋田間開業 |
東京ー博多間 4時間49分 | |
1997年4月 | リニア新実験線 実験走行開始 |
1997年10月 1日 | 長野新幹線(北陸新幹線) 東京・長野間開業 |
1997年12月 | リニア新実験線 有人走行最速 時速531kmを記録 |
1999年4月 | リニア新実験線 無人走行最速 時速552kmを記録 |
2000年3月 | ひかりレールスター 新大阪・博多間供用開始 |
2002年12月 | 東北新幹線 八戸まで延伸 |
2004年3月13日 | 九州新幹線「つばめ」号,鹿児島中央(旧西鹿児島駅)〜新八代間開業 |
2005年3月10日 | 山陽新幹線 岡山・博多間開業30周年 |
2006年4月 | 次世代新幹線300X 実用化 |
2007年7月1日 | 東海道山陽新幹線にN700系登場。最速で東京−大阪間が2時間25分 |
2008年11月30日 | 山陽新幹線から初代新幹線車両の「0系」が定期営業運転から引退 |
2009年10月21日 | 0系新幹線、さいたま市の鉄道博物館で、展示公開 |
2010年12月4日 | 東北新幹線 八戸駅〜新青森駅間 81.2km、開業 |
2011年3月12日 | 九州新幹線鹿児島ルート 博多駅〜新八代駅間 129.9km 開業 |
2011年度 | JR東海・JR西日本、新幹線「のぞみ」、全てN700系で運行 |
2015年3月24日 | 北陸新幹線 長野駅〜金沢駅〜白山総合車両基地間 開業 |
2016年3月26日 | 北海道新幹線 新青森駅〜新函館駅間148.8km、開業 |
2017年12月8日 | 日本イコモス国内委員会、「東海道新幹線/高速・大量輸送旅客鉄道システムの原点」 を日本の20世紀遺産20選に選定 |
2022年度 | 九州新幹線(長崎ルート) |
2027年度 | 中央新幹線 |
<出所>鉄道総研等の資料を基に作成 |
新幹線(The Shinkansen) 名古屋駅にて 2010年5月30日 新幹線は,わが国が世界に誇れる産業・技術遺産の代表格。 |
ユネスコ世界遺産に登録されている鉄道遺産 | |
Semmering Railway (Austria ) | |
文化遺産 登録基準(ii) (iv) 登録年1998年 | |
The Semmering Railway, built over 41 km of high mountains between 1848 and 1854, is one of the greatest feats of civil engineering of this pioneering phase of railway building. The quality of its tunnels, viaducts and other works have ensured the continuous use of the line up to the present day. It runs past a background of a spectacular mountain landscape containing many fine recreational buildings resulting from the opening up of the area with the advent of the railway. | |
Darjeeling Himalayan Railway (India) | |
文化遺産 登録基準(ii) (iv) 登録年1999年 | |
The Darjeeling Himalayan Railway is the first, and still the most outstanding, example of a hill passenger railway. Opened in 1881, it applied bold and ingenious engineering solutions to the problem of establishing an effective rail link across a mountainous terrain of great beauty. It is still fully operational and retains most of its original features intact. |
共通する文化遺産の登録基準(ii) (iv) | |
(ii) | exhibit an important interchange of human values, over a span of time or within a cultural area of the world, on developments in architecture or technology, monumental arts, town-planning or landscape design |
(iv) | be an outstanding example of a type of building or architectural or technological ensemble or landscape which illustrates (a) significant stage(s) in human history |
世界遺産化可能性のチェック・ポイント |
Identification of the Property |
□Country (and State Party if different)
□State, Province or Region □Name of Property □Exact location on map and indication of geographical co-ordinates to the nearest second □Maps and/or plans showing boundary of area proposed for inscription and of any buffer zone □Area of site proposed for inscription (ha.) and proposed buffer zone (ha.) if any |
Justification for Inscription |
□Statement of significance □Possible comparative analysis (including state of conservation of similar sites) □Authenticity / Integrity □Criteria under which inscription is proposed (and justification for inscription under these criteria) |
Description |
□Description of Property □History and Development □Form and date of most recent records of site □Present state of conservation □Policies and programmes related to the presentation and promotion of the property |
Management |
□Ownership □Legal status □Protective measures and means of implementing them □Agency / agencies with management authority □Level at which management is exercised (e.g., on site, regionally) and name and address of responsible person for contact purposes □Agreed plans related to property (e.g., regional, local plan, conservation plan, tourism development plan) □Sources and levels of finance □Sources of expertise and training in conservation and management techniques □Visitor facilities and statistics □Site management plan and statement of objectives (copy to be annexed) □taffing levels (professional, technical, maintenance) |
Factors Affecting the Site |
□Development Pressures (e.g., encroachment,
adaption, agriculture, mining) □Environmental Pressures (e.g., pollution, climate change) □Natural disasters and preparedness (earthquakes, floods, fires, etc.) □Visitor / tourism pressures □Number of inhabitants within site, buffer zone □Other |
Monitoring |
□Key indicators for measuring state of conservation
□Administrative arrangements for monitoring property □Results of previous reporting exercises |
Documentation |
□Photographs, slides and, where available,
film / video □Copies of site management plans and extracts of other plans relevant to the site □Bibliography □Address where inventory, records and archives are held |
課 題 |
新幹線を文化財としてどの様にとらえ保護していくべきか |
登録範囲(Area of site proposed for inscription and proposed buffer zone) |
参考文献 |
●世界遺産データ・ブック−2007年版− シンクタンクせとうち総合研究機構 発行 ●世界遺産学入門ーもっと知りたい世界遺産ー シンクタンクせとうち総合研究機構 発行 ●世界遺産データ・ブック−2007年版− シンクタンクせとうち総合研究機構 発行 ●世界遺産ガイドー世界遺産条約編ー シンクタンクせとうち総合研究機構 発行 ●世界遺産ガイドー文化遺産編ーVモニュメント シンクタンクせとうち総合研究機構 発行 ●世界遺産ガイドー産業・技術編ー シンクタンクせとうち総合研究機構 発行 ●世界遺産フォトスー第2集 多様な世界遺産ー シンクタンクせとうち総合研究機構 発行 ●誇れる郷土ガイドー関東編ー シンクタンクせとうち総合研究機構 発行 |