監修 古田陽久 企画・制作 21世紀総合研究所 編集 世界遺産総合研究所 発行 シンクタンクせとうち総合研究機構 定価 2,100円(本体2,000円) ISBN 4-916208-71-4 発行日 2003年7月14日 判型 A5 頁数 128ページ
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日本図書館協会選定図書
【本書の特色】イスラム諸国の主要なユネスコ世界遺産を特集。 イスラム諸国とは,イスラム教を奉じる国々のことで,アラブを中心に,アジア,アフリカ,北・南米などへと世界的な拡がりを見せている。イスラム諸国といっても,画一的ではなく,それぞれに固有の歴史や文化を有し,自然環境も異なる。本書では,ユネスコの世界遺産を通じて,イスラム諸国の多様性とイスラム文化圏の特色や特徴についても学習する。 【目 次】 ■ユネスコの世界遺産の概要 ユネスコとは 6 世界遺産とは 6 ユネスコ世界遺産が準拠する国際条約 6 世界遺産条約の成立と経緯 6 わが国の世界遺産条約の締結 6 世界遺産条約の理念と目的 7 世界遺産条約の主要規定 7 世界遺産委員会 7 世界遺産委員会委員国 7 世界遺産委員会の開催歴 8 世界遺産条約の事務局と役割 8 世界遺産の種類 9 危機にさらされている世界遺産(★【危機遺産】 33物件) 10 世界遺産条約の締約国(176か国)と世界遺産の数(125か国730物件) 〈地域別・世界遺産条約締約日順〉 13 ユネスコ世界遺産への登録要件 17 ユネスコ世界遺産の登録基準 17 危機にさらされている世界遺産リストへの登録基準 18 世界遺産基金 18 日本のユネスコ世界遺産 20 今後の日本の世界遺産候補地(暫定リスト登録物件) 20 今後の世界遺産委員会等の開催スケジュール 20 ユネスコ世界遺産に登録されるまでの手順 21 ユネスコ世界遺産の今後の課題 21 ユネスコ世界遺産を通じての総合学習 21 世界遺産分布図 22-23 ■イスラム諸国の概要 イスラム諸国と世界遺産 26 イスラム諸国の世界遺産 28 本書で取り上げる世界遺産の分布図 30-31 ■イスラム諸国の主な世界遺産 ウァダン,シンゲッテイ,ティシット,ウァラタのカザール古代都市(モーリタニア) 34 ニンバ山厳正自然保護区(ギニア/コートジボワール) 36 サン・ルイ島(セネガル) 38 ジェンネの旧市街(マリ) 40 アイルとテネレの自然保護区(ニジェール) 42 フェスのメディナ(モロッコ) 44 マラケシュのメディナ(モロッコ) 46 ジャマ・エル・フナ広場の文化空間(モロッコ)<口承・無形遺産> 48 ベニ・ハンマド要塞(アルジェリア) 50 アルジェのカスバ(アルジェリア) 52 チュニスのメディナ(チュニジア) 54 カイルアン(チュニジア) 56 ガダミースの旧市街(リビア) 58 イスラム文化都市カイロ(エジプト) 60 聖キャサリン地域(エジプト) 62 イスタンブール歴史地区(トルコ) 64 ビブロス(レバノン) 66 古代都市ダマスカス(シリア) 68 アムラ城塞(ヨルダン) 70 シバームの城塞都市(イエメン) 72 サナアの旧市街(イエメン) 74 バフラ城塞(オマーン) 76 ハトラ(イラク) 78 イスファハンのイマーム広場(イラン) 80 ジャムのミナレットと考古学遺跡(アフガニスタン) 82 サマルカンド-文明の十字路(ウズベキスタン) 84 「古都メルブ」州立歴史文化公園(トルクメニスタン) 86 タッタの歴史的建造物(パキスタン) 88 バゲラートのモスク都市(バングラデシュ) 90 キナバル公園(マレーシア) 92 プランバナン寺院遺跡群(インドネシア) 94 ■イスラム諸国の暫定リスト記載物件 イスラム諸国の国別暫定リスト記載物件(2003年6月1日現在) 98 <クローズアップ> ラス・モハメッド(エジプト) 102 ゲベル・バーカル(スーダン) 104 アシュル(イラク) 106 タクテ・ソレイマン(イラン) 108 マルディンの歴史都市(トルコ) 110 ■イスラム諸国の情報源と関連用語 113 国際機関(含むNGO),在日大使館・在外公館 114 キーワード 118 ■ 索引 122 尚,本書は全国のどこの書店からも注文でお取り寄せできますが, お急ぎの場合には,当シンクタンク事務局まで,ファックス,或は,電子メール で,お申込み下さい。 |
イスラム諸国と世界遺産 |
本書「世界遺産ガイド−イスラム諸国編−」では,イスラム諸国にある世界遺産を取り上げます。 イスラム諸国とは,一般的に,イスラム教を奉じる国のことで,公式にイスラム共和国を掲げる国は,モーリタニア・イスラム共和国,コモロ・イスラム連邦共和国,イラン・イスラム共和国,パキスタン・イスラム共和国,アフガニスタン・イスラム国の5か国。それに,イスラム教を国教とする国は,チュニジア,モロッコ,アルジェリア,リビア,エジプト,スーダン,ジブチ,ソマリア,レバノン,ヨルダン,サウジアラビア,イエメン,オマーン,バーレン,アラブ首長国連邦,カタール,クウェート,イラク,モルディブ,バングラデシュ,マレーシア,インドネシア,ブルネイの23か国あります。 ここでは,上記に加えて,イスラム教徒の人口が国の人口の半分以上を占める西サハラ,ギニア,トルコ,パレスチナ,セネガル,マリ,ニジェール,シリア,ウズベキスタン,キルギス,タジキスタン,トルクメニスタンの12の国,それに,イスラム諸国会議機構(OIC)に加盟している,アゼルバイジャン,アルバニア,ウガンダ,ガイアナ,カザフスタン,ガボン,カメルーン,ガンビア,ギニア・ビサウ,コートジボワール,シエラレオーネ,スリナム,チャド,トーゴ,ナイジェリア,ブルキナファソ,ベナン,モザンビークなどを含めた国と地域を対象にします。 このように見てみると,イスラム諸国は,ユネスコの地域分類で見ても,アラブ諸国を中心に,アフリカ,アジア・太平洋,ヨーロッパ・北米,ラテンアメリカ・カリブ地域へと世界的な広がりをみせており,イスラム教を信仰する人は,世界で10億人(約5人に1人)を超えています。例えば,アジア・太平洋地域のインドネシアの場合,この国の人口(約2.06億人)の約90%近くの約1.85億人がイスラム教徒で,世界最大のイスラム国家に成長しています。 イスラム諸国のある地勢,地形は,サハラ砂漠などの砂漠,ナイル川,チグリス・ユーフラテス川,インダス川などの大河などが壮大なスケールを誇り,歴史的な背景として,エジプト文明,メソポタミア文明,インダス文明など古代文明の発祥地でもあります。 また,キリスト教やイスラム教を生んだイエス・キリストやムハンマドなどの聖人の出生の地もあり,イスラム教は,この地域を中心に発展,世界的なイスラム文化圏を形成しつつあります。 民族・人種的には,アラブ人,ベルベル人,ペルシャ人,トルコ人,クルド人,トルクメン人,ウズベク人,ベンガル人,マレー人,パレスチナ人など多様です。 次に,イスラム諸国と世界遺産との関わりについて見てみると,イスラム諸国のほとんどの国がユネスコの世界遺産条約を締約しています。イスラム諸国にある世界遺産もモスクなどの宗教建築物ばかりではなく,国の成り立ち,歴史も様々であり,幾多の変遷を経て,今日に至っているから多様です。 今後,5〜10年以内に世界遺産に登録予定の暫定リストに数多くの物件がノミネートされていますが,まだ,世界遺産がない(2003年6月1日現在),サウジアラビア,スーダンなどの国からの新たな世界遺産の登録,それに,世界遺産条約を締約していないギニア・ビサウ,シェラレオネ,ジブチ,ソマリア,ブルネイなどの国々の締約が期待されます。 一方,ユネスコの世界遺産リストに登録されている物件のうち,深刻な危機にさらされ緊急の救済措置が必要とされている,ギニアとコートジボワールの国境にまたがる「ニンバ山自然保護区」(鉄鉱山開発),ベナンの「アボメイの王宮」(竜巻),セネガルの「ジュジ国立鳥類保護区」(サルビニア・モレスタオオサンショウモの繁殖),マリの「トンブクトゥー」(侵食), ニジェールの「アイルとテネレの自然保護区」(武力紛争),アルジェリアの「ティパサ」(効果的な管理計画の欠如,粗末な維持,心ない破壊や汚損,都市化の進行),チュニジアの「イシュケウル国立公園」(ダム建設),エジプトの「アブ・ミナ」(土地改良に伴う水面上昇による溢水) ,ヨルダン推薦物件の「エルサレム旧市街と城壁」(民族紛争),イエメンの「ザビドの歴史都市」(劣化),オマーンの「バフラ城塞」(風化),パキスタンの「ラホールの城塞とシャリマール庭園」(道路の拡張),アフガニスタンの「ジャムのミナレットと考古学遺跡」(長年の戦乱等による損傷や盗掘,川からの浸水,遺跡地域の道路計画)が危機にさらされている世界遺産(略称,危機遺産)リストに登録されています。 一方,世界遺産の範疇とは異なりますが,2001年5月に人類の口承及び無形遺産の傑作(いわゆる世界無形文化遺産)として,ギニアの「ニアガッソラのソッソ・バラの文化空間」,コートジボワールの「アフォンカファのグボフェ:タグバナ族の横吹きトランペット音楽」,ベナンの「ゲレデの口承遺産」,モロッコ の「ジャマ・エル・フナ広場の文化空間」,ウズベキスタンの「ボイスン地域の文化空間」の物件が選定されています。 この様に見てくると,イスラム諸国といわれるそれぞれの国の民族,歴史,伝統,文化も多様であり,画一的ではないことがわかります。 一般的に,イスラム教徒は,宗教生活のみならず,社会生活のすべてをイスラムの慣習にのっとって行わうことが求められます。国民共通のアイデンティティがなくなりつつある現代社会において,共通の宗教や思想を通じた社会システムは,計り知れない団結したパワーになります。 一方において,この地域においては,民族,宗教,思想,領有権などをめぐる問題から戦争,紛争が絶えないのも事実です。パレスチナ問題,クルド問題,西サハラ紛争,ソマリア紛争,スーダン紛争,ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争,ウズベキスタンのイスラム運動,そして,アメリカ同時多発テロに端を発したアフガン戦争やイラク戦争などがそうです。 イスラム社会は,わが国にとって,異文化社会であり理解できないことが多いのも確かですが,イスラム文化圏として見た総体は,その雄大で重厚な歴史と共に,魅惑的なアラビアのロレンスの世界へと私たちを誘ってくれます。 (参考) イスラム教徒が91〜100%の国と地域 ◎モーリタニア,西サハラ,ギニア,◎コモロ,○ソマリア,○ジブチ,○チュニジア,○モロッコ,○アルジェリア,○リビア,○エジプト,トルコ,パレスチナ,○レバノン,○ヨルダン,○サウジアラビア,○イエメン,○オマーン,○アラブ首長国連邦,○カタール,バーレン,○クウェート,○イラク,◎イラン,◎アフガニスタン,◎パキスタン,○モルディブ,○マレーシア,○インドネシア,○ブルネイ イスラム教徒が51〜91%の国と地域 セネガル,マリ,ニジェール,シリア,イスラエル,○スーダン,○バングラデシュ,ウズベキスタン,キルギス,タジキスタン,トルクメニスタン イスラム教徒が5〜50%の国と地域 ガボン,カメルーン,チャド,トーゴ,ナイジェリア,ブルキナファソ,ベナン,ガンビア,ギニア・ビサウ,シエラレオーネ,コートジボワール,中央アフリカ,ウガンダ,ボツワナ,モザンビーク,マダガスカル,アゼルバイジャン,アルバニア,ボスニア・ヘルツェゴビナ,カザフスタン,タイ,ガイアナ,スリナム,トリニダードトバゴ,タンザニア,ケニア,エリトリア,フランス,ユーゴスラヴィア,ブルガリア,ベラルーシ,インド,ミャンマー (注)◎公式なイスラム共和国,○イスラム教が国教の国 |
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